大人になりきれない


もう10年近く前の事を根に持つ

痛かった
寂しかった

行ったこともない病院に行って
すぐ入院といわれて
何も持ってなくて

家にも帰れなくて

意識がなくなった
目が覚めた時は車イスに乗せられて
耳から血を抜かれて
色んな検査をされて
よくわからないままサインを書かされた

次に記憶にあるのは親に連絡を取った
お金はそこで払ってくれるから手術できる


ああ
来てはくれないのか
そうだよな
当たり前か

キツイ靴下を履かされて自分で手術台に上がった

緑色の手術室

3秒
吸ったら意識はなくなった

目が覚めた時は
激痛で叫んで泣いた
痛みで泣いたのはいつぶりか
子供のように痛い痛いと泣いた

薬が切れたのねと看護師がきてまた眠らされた

たった数分の意識の中で自分は一人だった

隣には家族に囲まれた患者

僕は一人だった


目が覚めたら病室で
充電がほぼなくなった携帯には大学から電話がきていて

色んな人から連絡があったけどほとんど覚えていなかった

傷が塞がっていないが翌日にはレントゲン

動けと言われて生かしたいのか殺したいのかわからなくなった

点滴に繋がれて動かない体

ただ動けと言われて無理やり歩かされる

バイト先から連絡が来ていて入院していると伝えたらそうですかと切られた

クビだと思ったよね
親からは連絡がなかった
多分来てたんだろうけど
行かなくてもいいよねって内容だったかな

来れないことなんかわかってたし休みなんかとれないし

忙しいだろうし

大丈夫とは行ったけどお金もない
着替えも充電機すらない

3日の絶食点滴のお陰で体はつらくない
ただクマだけがこくなった

とくにすることもない
テレビもお金がなくて見られない
ただじっとカーテンを閉めて
薄暗い中、周りの見舞いの声を聞きながら
自分は一人だと思い知らされた


ご飯食べていいと言われても箸もなかった

啜ったものは美味しかった

僅かしかないお金で箸を買った

これで少し人間っぽい

ご飯の時間しか楽しみがなかった

ただベッドでじっとしてるだけ

寂しかった

夜中にトイレに行って倒れてても誰も助けてくれなくて
見つかったのは何時間後だったかな
すぐ誰か来てくれたんだったかな

看護師さんがすごく優しくて大変なんだと

なおさら会いに来てなんて言えなかった

今さらどうして思い出す

いつも金だけ

頼らないもう

可哀想な人に優しいのは自分が辛かったから

嫌だったから


寂しかったから


人には優しくしないといけない

寂しい思いをさせてはいけない

ちゃんとしないといけない


寂しい

寂しい