4デイズ
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映画「4デイズ
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■監督:グレゴール・ジョーダン
■出演:サミュエル・L.ジャクソン、キャリー=アン・モス、マイケル・シーン、ブランドン・ラウス、スティーヴン・ルート
■ストーリー

イントロダクション
アメリカ合衆国の3億人の命か、テロリストの人権か。
サミュエル・L・ジャクソン×キャリー=アン・モス×マイケル・シーン、3人の演技派俳優が火花を散らす!世界を変えた、9.11アメリカ同時多発テロ事件から10年?イラク戦争をモチーフにした、衝撃のサスペンス・スリラーがここに誕生した!
9.11アメリカ同時多発テロ事件から10年― 『ハート・ロッカー』『グリーン・ゾーン』『リダクテッド 真実の価値』といった、数々のイラク戦争を題材とした作品の系譜に、新たな一本が加わった。

超個性派俳優サミュエル・L・ジャクソンがまた魅せてくれた!
今回の役柄は、政府に雇われながらも、目的のためなら手段を選ばず、テロリストを追い詰める尋問のスペシャリスト”H“。人権や倫理を無視した拷問ともいえる手法は徐々にエスカレートしていき、次第に周囲とも対立していく。

そして、彼のやり方に反発しながら、国民を救うための手段を模索するヘレン捜査官にキャリー=アン・モス。かつてはイラク戦争に従軍し祖国のために戦った純アメリカ人ながら、今はアメリカに対し強い憎しみと怒りしか持っていないテロリスト、ヤンガーにマイケル・シーンと、豪華な顔ぶれが揃った。
監督は、ベルリンの壁崩壊直前の西ドイツに駐留する米兵たちの姿を描いたブラック・コメディ『戦争のはじめかた』(01)を撮った、社会派映画のエキスパート、グレゴール・ジョーダン。今作もイラク戦争という巨大なテーマを掲げながら、アメリカの対テロ戦争への、そしてテロそのものへの皮肉と鋭いメッセージを込めた、挑発的な作品に仕上がっている。


あらすじ
アメリカ政府に、あるテープが送られてきた。そこに映されていたのは、国内の3都市に核爆弾が仕掛けられており、4日後に爆発するという衝撃的なテロの告白だった。犯人はイスラム系アメリカ人、スティーブン・ヤンガー。FBIロサンゼルス地方局でテロ対策チームを率いるヘレン・ブロディ捜査官(キャリー=アン・モス)は、CIAに雇われている謎の特別尋問スペシャリスト“H”(サミュエル・L・ジャクソン)と組んで、自ら進んで逮捕されたヤンガーを極秘施設に監禁し、爆弾を隠した場所を吐かせようと尋問するのだが・・。

拷問をエスカレートする“H”。残された時間はあとわずか。
犯人の目的は一体なんなのか?彼らはテロを防ぐことができるのか?!


感想。
物凄く重いテーマの作品でした。
途中から段々、特別尋問スペシャリスト“H”(サミュエル・L・ジャクソン)の性格設定みたいなものがブレてきたのが、惜しかったかな(´・ω・`)
ここは最後まで冷徹に仕事を完遂してほしかった。これを生業としてる割に最後の方は感情的になりすぎていたように思う。
楽しむ系の映画ではなくて、悩む系の映画。なので好みは分かれるかと思います。

この作品は、私達日本人とアメリカ国民、そしてイスラム圏の人々では全然感じ方が違ってくる内容だと思います。
戦争産業には直接関わってない日本人が観ても、この作品の真意を汲み取ることは難しいと思うテーマですからね(;´Д`)
これはアメリカ国民向けの作品だと思います。

アメリカ国民の目で見ると、核爆弾を設置して大量殺戮を企てているイスラム教徒になったアメリカ人テロリストが許せないと思うでしょう。デルタフォース所属の元軍人でありながら祖国を裏切り、改宗改名して「イスラム圏からのアメリカ軍の撤退」という到底飲めやしない要求を突きつけてくるヤンガーというテロリスト。
核爆弾の場所を吐かせるためなら、非人道的な拷問くらい何だと言うんだ!と考えるアメリカ国民は多いと思います。
だから特別尋問スペシャリスト“H”に肩入れし、そしてHのやり方に異を唱えるFBIブロディ捜査官には「何ぬるいこと言ってんねん!」と苛立ちを感じながら観るんだろうな~と思いました。

その一方で、非道な拷問を止めて欲しいとも思うのですよね。やっぱ人間ですから、そういうやり方には生理的嫌悪を感じて当たり前です。でもやっぱり、核爆弾なんか仕掛けたテロリストだから、これくらいやっても当然…と思い直したりね。その2つの間で揺れながら、葛藤しながら、何が正しいのかを考えて貰う作品なのかなと思ったり。
気持ちはHとブロディ捜査官の間を行ったり来たりしちゃいます。

そもそも何故アメリカがイスラム圏から手を引かないか。やっぱそれは軍需産業のため、に尽きると思います。
正義を振りかざしながら、その裏で兵器を売りまくっている。イスラム圏の人々から見れば、何より“悪”なんですよね。
勿論イスラムの人々が正しいかと言えばそうとも言えないし、アメリカが手を引いても内戦は無くならないだろうし…色々と複雑な問題を抱えていますよね。宗教って難しい。
その辺の複雑怪奇な問題を解決しようと、いや、解決出来ないのを分かっていて、でも僅かな本当に砂粒ほどの期待を込めてヤンガーは政府に突きつけてくるのです。いや、砂粒ほどの期待もしてないかな。ゼロだな。
ヤンガーが政府に突きつけた到底飲めない要求。それはこの映画がアメリカ国民に対して突きつけた、目を逸らすことが出来ない現実だと思います。イスラム問題をどう考えているのか、貴方はどうすべきだと思うのか。アメリカが100%正しいのか。

そしてヤンガーとH達の壮絶な騙し合いの頭脳戦。
ヤンガーは「3箇所に爆弾を仕掛けた」と言ってますが、「消えたプルトニウムの量だと4つの筈」と唯一人そう分析するH。
このまま拷問を続けて4つ目を吐かせるか。でも4つ目がある確証はない。もう止めてというブロディ捜査官。
どんどん拷問はエスカレートしていき、ヤンガーの妻を殺し、そして子供達まで持ち出してきます。
それを止めるブロディ捜査官。Hはやけくそになったのか、ヤンガーの拘束帯をナイフで切って「釈放だ」と解放しちゃいますし(;´Д`)いや、このシーンはちょっと強引に思えた。
思い通りの結末へ持って行くには、こうするしかなかったんだろうけれど、ちょい無理矢理過ぎ。

4つ目は無いわよ。と子供達を守ったブロディ捜査官と、何としてでも4つ目を吐かせたかったH。
Hが解放しちゃったせいで「子供達を頼む」とブロディ捜査官に言い残して、隙を見て拳銃奪って自殺しちゃったヤンガー。4つ目への真実は闇の中へ。
さて、Hとブロディ捜査官のどっちが正しかったのか。まぁどっちも正しくはないと思いますが。というか正解は無いのかな。
この2人のどっちに肩入れしながら観てきたか。どっちに肩入れしても、凄く後味が悪いオチなんですけれども。

そして、日々平穏に暮らしている人々を守っているのは、こういう“汚い仕事”をしている人々のお陰…というのも言いたかったのかな。彼らは好きで拷問してるわけではなく、守るべき物(アメリカという国)の為に拷問をしてるんだよね。そしてヤンガーも好きで拷問されてるわけではなく、彼らに自分達が何をしているか訴えたかったから、わざと捕まって非道な拷問を受け続けたんだろうなと思った。
だって只単に「イスラムから手を引け」って言いたいだけなら、声明だけ出して要求をすぐに突きつけて、それで要求を却下されたら核爆弾をスイッチ1つでドカンと爆発させれば良いだけだもんね。
でもそれでは何の解決にもならないから、自らを犠牲にして問題を彼らに突きつけたんだと思う。
問題を突きつけたのは、勿論映画を観てる人々にだよね。

うん、私も衝撃だったけれど、アメリカ国民はもっと衝撃だったと思う。
どう感じたんだろうか。ちょっと知りたかったり。