最強のふたり
(c) 2011 SPLENDIDO / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / TEN FILMS / CHAOCORP
映画「最強のふたり
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■監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
■出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、アンヌ・ル・ニ、オドレイ・フルーロ、クロティルド・モレ
■ストーリー
解説
フランスで公開されるや歴代興収記録第3位という大ヒット。フランス国民の3人に1人が観たばかりか、ヨーロッパ各国でもNo.1ヒットを飛ばし、ハリウッドがリメイク権も獲得した話題の本作。主人公は体が麻痺して車椅子生活を送る大富豪と、スラム出身の黒人青年。クラシック音楽を愛し、現代美術に造詣が深い富豪と、アース・ウインド&ファイヤーが好きで会話も下ネタが多い青年。歳も趣味も性格も、育ってきた環境もまったく違う2人だからこそ、利害関係のない人間同士の友情が生まれたのだ。しっとりとした人情ものではなく、さらっとしたコメディタッチで描いたのは正解で、後味もいいさわやかな作品となっている。

あらすじ
ひとりは、スラム街出身で無職の黒人青年ドリス(オマール・シー)。もうひとりは、パリの邸に住む大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)。何もかもが正反対のふたりが、パラグライダーの事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。
その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──だが、ふたりとも偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。
互いを受け入れ始めたふたりの毎日は、ワクワクする冒険に変わり、ユーモアに富んだ最強の友情が生まれていく。そんなある日、心配してドリスの経歴を調べた親戚が、宝石強盗で半年服役した前科者だから気をつけるようにとフィリップに忠告する。
しかしフィリップは、「彼は私に同情していない。そこがいい。彼の素性や過去など、今の私にはどうでもいい事だ」と、毅然と答えるのだった。フィリップを車の荷台に乗せるのを「馬みたいだ」と嫌がって助手席に座らせたり、早朝に発作を起こした彼を街へ連れ出して落ち着くまで何時間も付き合ったり、意外にもドリスには自然な思いやりや優しさがあった。
だが別れは突然やってくる。ヘマをして仲間にシメられたドリスの弟が、ドリスのもとに逃げ込んで来たのだ。家族のことを真剣に思うドリスを見たフィリップは、「やめにしよう。これは君の一生の仕事じゃない」と提案する。翌朝、名残を惜しむ邸の人々に、陽気に別れを告げるドリス。
フィリップは真っ当な介護者を雇い、ドリスは運転手の仕事を見つける。ドリスは自分の人生を始めるが、フィリップは再び孤独に陥っていた。そしてドリスは突然真夜中に呼び出される。いったいフィリップに何があったのか……。


感想。
評判どおりの面白さでした。おすすめします(*´Д`*)
ド派手ばかりが売り物のハリウッド作品とは全然違うのが良いですね。
考え方も立場も価値観も育ちも全てが正反対の2人が出会って揺るぎない友情を育んでいく、なんだか優しい気持ちになれる作品です。
コメディ作品とありますが、下品系で笑いを無理矢理取るようなものではなくて、くすっとしちゃう系の気持ちの良い笑いが出来る上質のコメディです。
ドリスのシモネタだって、下品系お馬鹿コメディに比べたら上品なもんですわ。

由緒正しい家系の富豪で、なんの不自由も無い生活だった筈のフィリップ。しかし愛する妻は5度の流産で子供には恵まれず、それでも子供が欲しくて養子を取ったのですが、妻は不治の病に冒されていて死亡。
そんなフィリップも趣味のパラグライダーで、強風で危険な日だったのですが病に冒されている妻の気持ちになりたかったとか語ってますが、無理に飛んで墜落し、頸椎損傷で首から下が全く動かない寝たきり状態になっていました。

一方のドリスは複雑な家庭の底辺層。
いわゆる黒人移民層ってやつですね。ドリスは幼い頃に両親が亡くなったので子供がいなかった叔母夫婦に引き取られてました。しかしその後、夫婦は2人子供を産んじゃいます。その上、何度も叔母は離婚再婚を繰り返し、沢山の小さな子供達がスラム街のアパート内に居る状況。
ドリスは自分の居場所もなく、プラプラしてたり宝石店強盗しちゃったりして、近所でも笑いものになってるようでした。母親代わりの叔母は沢山の子供を養うために朝から晩まで働きっぱなしです。

そんな2人が出会ったのは、フィリップの介護者選びの面接でした。
障害者だからと同情されたり憐れみを含んだ目で見られたり…そんな扱いが嫌で堪らないフィリップ。
そんな人間しか応募に来なくてウンザリしている所へ、ドリスがぶっきらぼうに入ってきます。
そして「不採用の証明書にサインをくれ。3回落ちると失業手当が貰えるんだ」と、フィリップにも仕事にも興味を持たないドリスを面白く思って試用期間を設けて、彼を雇ってみる事にしました。

生活環境も趣味嗜好も考え方も全く違う2人。
しかし、何となく普段の生活に違和感を感じて、周囲から疎外感を感じていた2人は似た者同士なんでしょうね。
やがて意気投合し、お互いに自分が持っていない部分で刺激されて、良い方向へと変わっていきます。
この辺の描き方が本当に秀逸。
自分を“障害者”だと考えず、ごくごく普通に扱ってくれるドリス。全く気を使わず、それどころかズケズケと障害部分を興味津々で見てくるし。感覚のない足にお湯を掛けて「熱くないのかよ?すげー(*゜∀゜)=3」なんて事やらかして周囲の人を慌てさせたりしてます。
フィリップの送迎に使っている車椅子用の自動車をだっせぇと馬鹿にして、隣にあったフィリップの多分事故前に乗っていただろう愛車を「こっちが良い」と選んで「実用的じゃない」というフィリップを抱き上げて助手席に座らせて、普通に運転を楽しんだりね。
自分にお金目当てでおべっか使うわけでもなく、不自由な体を憐れむ事も無いドリス。そればかりか障害のため諦めていた事を次々としてのけるドリスに忘れかけていた気持ちを取り戻しつつありました。
“普通の人間”として自分に接してくれるドリスに、フィリップはやがて“障害者”である事を差別されたくなかったのに、自分自身で自分を“障害者”だと差別していたという事に気付きます。

ドリスの方も、フィリップの身の回りの介護(マッサージしたり血液循環用のストッキングを履かせたり摘便したり発作の世話をしたり、ついでに文通相手との仲を取り持ったり)をしている間に、他人を気遣うという心を思い出します。
フィリップの多感な思春期中の養女を躾けたり、その子の恋を応援したり、そうやって他人に協力するという過程を経て、自分の母親代わりの叔母や義弟を思いやる優しさを得るんですね。

お互いに、支え合う2人。
毎日陽気なドリスに笑いを貰って、今までの環境では接することも無かった音楽や嗜好品(煙草等)を教えて貰うフィリップ。ドリスだって今まで無縁だったクラシックや絵画に触れたりしてお互いの世界の幅を広げていきます。
しかし、その生活もいつまでも続くわけではなくやがて終わりを迎えます。
それはドリスの義弟がヘマをやらかしてドリスを頼ってフィリップ邸へ逃げ込んで来たからでした。

自分は充分に彼から何でも与えられた。彼は彼の家族を支える時期だとフィリップは判断してドリスを解雇し、家族の元へと帰すのです。
義弟と共に、駅で仕事帰りの叔母を出迎えるシーンは印象的でした。
今まで気遣うことも無かっただろうに、叔母の荷物を持ってやり、仲良く3人帰路へとつきます。
それはフィリップが与えた優しさなんでしょう。

一方のフィリップは、ドリスと出会う前の生活に逆戻りしました。“障害者”として自分に気を使いまくり同情しまくりの新しい介護人。本音を言える友達はもう居ない。
やる気を失い、抜け殻のようになったフィリップに彼の秘書はドリスを呼び出します。
ドリスは彼を連れ出し、彼の愛車でドライブへと出掛けます。
警官相手に悪ふざけやって馬鹿笑いしたり、大声で歌ったり…久しぶりに心の底から楽しさを味わったフィリップ。
朝まで車を走らせ続け、どこかの湖畔?海辺?のホテルへ。
彼の髭をふざけながら剃ってやり、朝食を取るためカフェへ。
そこで、ドリスは彼に最大で最高のプレゼントを置いていくのでした。
フィリップが誰にも理解されず孤独な生活を送らない為に。
“障害者”だからと臆病になり、こんな姿を見せたら振られるのではと、一度は恐怖でドタキャンしちゃった“文通相手の彼女”との再デートをセッティングしていたのです。
気が回りすぎだよドリスwでもここで泣きそうになった。
フィリップが、ドリスに対していつまでも自分の介護をしていたら彼は家族を幸せに出来ないと考えたように、ドリスも同じ事を考えていたんでしょうね。
フィリップに必要なのは介護人の自分ではなくて、ずっと傍にいてくれる家族なんだと。
2人の友情は勿論ここで終わるわけではなくて、今でも続いています。

元ネタになった実物のフィリップはモロッコに引っ越して子供も産まれ、ドリスも会社を立ち上げて結婚して子供が居ます。
ていうかさ、最後に実物の2人の映像が入るんだけれど、ドリスって黒人じゃないじゃん!ラテン系じゃん!w
俳優さんもラテン系を使えば良かったのに、何故よww

さて、これはフランス映画だから良い雰囲気に仕上がったんだけれど、ハリウッド化したらどうなっちゃうのかな(;´Д`)この雰囲気ぶち壊さないで欲しい。
音楽とか映像とか、そういう演出も凄く良かった!だから、余り変な風に改造しないで欲しい…うん。