朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに

     吉野の里に 降れる白雪


 【作者】坂上是則 (さかのうえのこれのり)

     生没年不詳 平安前期の歌人

     三十六歌仙の一人

     坂上田村麻呂の子孫といわれ
     
     蹴鞠の名手と伝えられる
   

 【現代語訳】

     ほのぼのと夜が明ける頃、空に
 
     残っている有明の月の光が降り

     注いでいるかと思うばかりに

     吉野の里に降り積もっている白雪よ




 ※  坂上是則は、平安時代前期に征夷大将軍
    
    として蝦夷平定をした坂上田村麻呂の
    
    子孫だと言われている

    その血を受け継いでか、運動神経が
    
    よかったらしく、蹴鞠の名手としても
    
    有名で、醍醐天皇の御前で二百六回も
    
    連続で蹴って褒美をもらったそうだ
    
    
    

    吉野といえば冬は雪、春は梅や桜の

    名所として有名で、歌枕にもなっている

    自然が美しいところで、歌人は好んで

    この地で歌を詠んでいる
      


    「朝ぼらけ」は「あけぼの」と同じで、

     夜が明けてきて、ほのかにあたりが

     明るくなってくる頃

    「有明の月」は、月の入りが遅くなり

     明け方まで空に残って光っている月

     のこと

     明け方に「外が明るいな」と思って

     目を覚ますと、一面に眩しく輝く

     銀世界が広がっていた

     その雪の白さに目がくらんで明け方の

     月と錯覚してしまったくらいだと是則

     は言っている 美しい比喩である

     「朝ぼらけ」と「有明の月」「白雪」

     が三位一体となって重なり、淡雪が

     うっすら積もった景色を想像させる
     
     美しい歌です