有明の つれなく見えし 別れより

     暁ばかり 憂きものはなし


【作者】 壬生忠岑 (みぶのただみね)

     生没年不詳 平安前期の歌人


     三十六歌仙の一人

     「古今集」の選者の一人


     忠見の父



 【現代語訳】

     有明の月が無情に別れねばならぬ時
     を告げるので、それ以来、暁ほど
     つらく思われるものはないようになった



 ※  あるとき定家が、後鳥羽院に「古今和      歌集」の中でもっとも優れた歌は何かと
    尋ねられて、忠岑のこの歌を挙げた

    そうしたら、打ち合わせしたわけでも
    ないのに、先に同じ質問をされていた
    藤原家隆もこの歌を挙げていたそうだ


    この歌には二通りの解釈があるそうだ

    「月」が「つれない」という場合は
    愛する女とひと晚一緒に過ごした後、
    当時の風習として、男は朝方には帰ら
    なければならない

    後ろ髪を引かれる思いの男に対して、 
    有明の月は平然と空に残っている

    私の思いなど知らない冷たい月だという
    解釈
    
    この場合、男女の関係は良好と取れる


    一方、つれないのは「月と女の両方」 
    という場合は、男が女のもとへ行ったら
    冷たくあしらわれ、追い返されてしまう

    その時空に出ていた冷たく輝く「有明の     月」とともに、忘れがたい哀しい記憶に
    なって、それ以来、明け方ほどつらく
    憂鬱な時間はないのだということになる

    
    忠岑は一体どちらの気持ちでこの歌を
    詠んだのたろうか?

    どちらしても、忠岑の深い思いを感じる
    せつない気持ちが伝わってくる