ボロボロになった父は、とても悔しがった。

そして、とても痛がった。

危ない状態になり、家族が呼ばれた。
そして主治医から、
これ以上の治療は治すためではもうなく、
ただ延命のための処置であるという内容の説明を受けた。

つい数か月前までは、
ただ胃の不調だけだった父の身体は、
あっという間に全身が癌に蝕まれ、
身体中の痛みに包まれていた。

癌を治すための抗がん剤なのに、
癌が広がり父から笑顔を奪った。

最後の夜、
父は痛みに呻きながらこういった。

『運が悪かった・・・』

癌って、こんなに痛いんや。
死ぬって、こんなに苦しいんや。
・・・衝撃だった。


一番中痛みに苦しめられた後、
主治医がキツメの薬の点滴を入れる許可を母にとった。

そしてほどなく、父は逝った。

キツメの薬・・・本当にキツイんやね。
そして、人の死をコントロールしたんやと思った。

生きているとき、
ほとんど会話らしい会話をした記憶もなく
優しい言葉をかけられたこともない父。
家族とはいえ、遠い遠い存在だった父。

だけど、最後の最後、

父がこの死をもって、
私に教えたことはとても大きかった。

父の死から2年。

私は癌を自分なりに知ろうとし、
そして抗がん剤の本質を知った。

だから今、
私は抗がん剤を使わずに、
癌と向き合うことを選択する。