手のひらに封印される | 星読み師★松原由布子の占い以前

手のひらに封印される

今日は金曜日に読み終えた本のご紹介。
半村良 の『石の血脈 』です。
ツイッター でつぶやいたら「渋いですね!」と返していただきましたが、
ほんとに骨太な小説で、安心して物語の中へ頭から全身で飛び込むことができました。

この作品は1973年に第1回泉鏡花文学賞を受賞しています。
第1回を受賞されるということは、泉鏡花生誕100年を記念して制定されたことと、
この作品に対するきちんとした評価をするという二重の意味があるのかな、と思いました。
だってこれすごいですよ!デビュー長編なんですって!!
どんな新人よ??

作家になる前にいろんな経験を積まれたような記述がありますが、作品に体験を昇華する
その能力は並はずれていると思います。
舞台は日本の中から一歩も外に出ていないのに、ものすごく壮大な物語です。
ついつい舞台の範囲を「世界をまたにかけて~」と考えちゃうけど、そうじゃないんですね。

「伝奇SF小説」(彼がこのジャンルを開拓したとされています)の初体験は強烈でした。
ネタバレになるから書かないですが、ラストが!ラストが~!!
登場人物がみんな魅力的で、どんな存在でどんな服装で仕草で生き生き動いているか
目の前にいるみたいなんですよね。(特に会沢さん大好きだわ)
だから、物語が進めば進むほど、クライマックスへ向かうほど切なくなるし揺さぶられる
力がどんどん強くなっていくんです。
ハッピーエンディングであるはずないんですけど、だからってアンハッピーなのかというと
そんなことは全然なくて、熱い塊を呑み込まされたみたいになります。
嫌ではなくて、爽快でもない。だけど感動します。
あああ、言葉がついていかないなぁ・・・

本がとてつもないと思うのは、横10.5×縦15.2×厚み2.3=367.08㎤の中に
あの広大で深い闇色の世界と眩しい光を秘めていることです。
だからまた新しい本に出会いたいと思うんですね。
素晴らしい作品でした。