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・中学時代の国語の教科書に「マッチ」という作品がありました。夜行列車の座席で、マッチを擦っては消す擦っては消すをくり返していた青年を、初老の男性がたしなめるという短いお話でした。すごく印象深いお話で、ある日ふと「あの話は誰が書いた話だろう」と思い立ったのです。

 

・こういう時のnetは便利なもので、あっという間に作者は永井龍男氏ということが分かりました。それどころか、同じ雑感をnetで開陳している人もいたりしてびっくり。そして、当然の帰結として「もう一度読んでみたいなあ」と考えるわけです。大変なのはここからでした。

 

・どの作品に所蔵されているか分からず、検索に次ぐ検索。氏の全集があると分かり、所蔵リストを探る。ようやく全集の第2巻に入っていると知る。県立図書館に出かける。閲覧申請をしてついでにコピーを申し込む(手続きが面倒)。やっと「マッチ」に巡り会えたのです

 

 

 

・1年ぐらい前の話ですが、改めて読んでみて思い出したのです。中学時代の国語の先生はただ一言「いいだろう・・・この話」と言って、授業らしいことを何もしませんでした。でも、「それでいい」とボクも納得したのです。そんな思い出の作品、やっぱり手元に置こうと思い、先ほどnetで注文しました。という顛末のお話でした。

 

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・言わずと知れた半沢直樹シリーズ第4弾。ボクの買ったのは文庫本。題名だけでは売れ行きに事欠くと思ったのか、背にも表紙の隅にも「半沢直樹4」と表記するあたりが少々うるさい。でも買いますね。毎日面倒な案件を抱えるサラリーマンにとっちゃ、この本を読んで味わえるカタルシスにはお金を払いますわ。

 

・今回の半沢の相手は、破綻寸前の「帝国航空」という大企業、そのテコ入れに横やりを入れるのが(テコイレにヨコヤリって語呂がいいな)政権を獲ったばかりの「進政党」の政治家。もうほとんど現実の世界です池井戸さん・・。ま、確かに空港立地は甘い水を啜る最良の手段だったのだとよく分かりました。

 

・まあそれでも本作を「最高傑作」と呼ぶのは若干盛りすぎの印象で、半沢の機知とか頓知とか奸智とかはあまり無かったかも(むしろ殊勲は別銀行の女史でもある)。また、中野渡頭取が面白い仕掛けを施している。ここら辺が本作の醍醐味と言えるかなあ。最後にスッキリできるってやっぱりいいわ!

 

 

 

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・もしタイムマシンに乗って過去に行けるとして、行き先をどこにするか。ボクは「開府前の江戸」っていうのを選択肢に入れてます。本能寺ホテルとか信長協奏曲とか信長のシェフとか、耳目の集まる所を避けて(笑)あえて何も無かった東京の原風景を見てみたいと思う。そんな人いませんか?

 

・で、本作は何も無かった江戸をどう造り上げたか、水利、鋳造、土木、築城などのテーマに分けてそこに奔走した人物を描いています。伊奈忠次なんていうマイナーな武将も、信長の野望に授業料払ってるボクは当然知ってる。彼もなかなかの仕事をしたのですね。

 

・当の家康もちょこちょこ出てきて印象的な一言を吐きます。秀忠も登場。ぼんくら二代目と思いきやなかなかの前向きな描かれ方をしています。部下に変装して職人に混じり、うっかり自分の悪口を聞いてしまうあたりが痛快でした。さて、次の上京には皇居の石垣をしっかり観察して来よう。

 

 

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・「グラスホッパー」「マリアビートル」と続く殺し屋シリーズ。とはいえ続編ではないので、読んでいればLinkが楽しめる、という程度の関わりです。ま、その細かいLinkとかどうでもいい伏線が伊坂作品の醍醐味でもあるのだけれど。

 

・本作の主人公・兜は凄腕の殺し屋でありながら、ごく普通の家庭を営み、しかも恐妻家であるという設定。しかも恐れる妻への対応メモなんか作っているというお茶目な殺し屋でもあるのです。ただ、まあ、異性と生活を立てる男性は得てしてそういうトコロがあるよなあ。すごく納得。

 

・状況設定は殺伐としているようで、そしてラストも決してハッピーではないものの、妙に清々しく本を閉じることができました。様々な個性の殺し屋の登場(檸檬と蜜柑♪)、スズメバチ(雄)の撃退、親子の対話など名場面も多数。この殺し屋設定もシリーズにしていって欲しいなあと思えました。

 

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・出ました13作目。もちろん1作目から読んでいるわけですが、本作は評価していいと思う。理由その1・マコトが自分だけで問題を解決した。つまりGボーイズのキング・タカシの力を借りなかったわけ。たまにはマコト自身の機知でトラブルを終息させる。ボクはそういう話が意外と好きなので。

 

・理由その2・魅力的な脇役の再登場。サルでしょう。ゼロワンでしょう。吉岡刑事でしょう。池袋署の署長・礼にいもちょっぴり出てきている。ボクは特にゼロワンが好きなので、今回の茶目っ気のある登場の仕方は面白かった。

 

・理由その3・人情話満載。マコトはもはや寅さんの域に達してきているような気がするほど、お節介の度が過ぎており、それが逆に心地良い。マコトの母も今回名言を吐きました。女子高生にも霊能力者にも財閥にもツテを作ったマコトくん。これからどれだけ知己を広めていくのか楽しみに14作目を待ちましょう。次は過重労働っすか。

 

 

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・シリーズ4作目。三島屋のおちかさんが様々な怪異譚に耳を傾ける連作。以前の作品をレビューしてないような気がするけど、ま、忘れたからいいや、読んだばかりの本作をレビューします。語って語り捨て、聞いて聞き捨てが設定のモットー。なら読者も読んで読み捨てだわいな。実際、余韻を味わいながら二度は読まない話でもある。

 

・つまらない、というのではないのです。本作も傑作ぞろいでした。死者との邂逅、料理屋の憑神、山里に棲まう鬼など、様々なあやかしが登場しますが、怖さというよりはそれが愛おしく思える。宮部氏の作品はそこに美味しそうな物やその時代の風習や武家と庶民を織り交ぜた人間模様を提示して、魅力的な作品に仕上げています。

 

・で、白眉を挙げるなら表題作と言いたいところですが、「おくらさま」かなあ。やっぱりおちかさんの周りが動き出すと面白さは増す。新たな恋の予感もするし。そもそもおちかさんの悲しい身の上も忘れてしまったけれど、それでもおちかさんの再生を期待させて本作は収束。さあ来い五之続(笑)。

 

 

 

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・東野圭吾氏の作品はウチの市立図書館でも予約待ちが凄まじく、果てしなく待った上で忘れた頃に手元に届く。そしてこれは一体何のお話だったのだろうとちょっぴり回顧しながら、表紙を開く。そして読みやすさにあっという間に読了する。それが分かっているから安定の作家サンなのですね。

 

・主人公(動物病院の医者。ちょいちょい挿入される診察シーンが実は面白い)の弟が失踪。その婚約者を名乗る女性の登場。この女性がそこはかとなく怪しい・・。ま、物語の軸はそんなところです。よくある遺産相続とか、よく聞くサヴァン症候群とか、味付けもあって飽きさせません。ただ、ウラムの螺旋は面白かった。数学的話題は大好き。

 

・で、問題はこの婚約者だ。「危険なビーナス」かい(笑)。氏の作品は題名がまあ主題ではあるのだけれど、もうちょいwitの効いた表現は無かったものだろうか。東野圭吾氏ってどーも出版社に題名を丸投げしているような気が・・いや失礼。結末は良かったですよ。僕は素直にビックリできる性格なので。

 

 

 

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・この作家さん、うちの地元の本屋サンでもオススメのようでずっと平積みになってました。気にはなってたのですが、やっと手に取りました。連作もあるようですが、まずはこの作品。結論から申しますと、よい作家さんに巡り会えました。これから私の本棚に並びます。

 

・「大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本」って帯に書いてあるんですが、一体どう解釈すればよいのか分からん・・。でも、読後納得できました。確かにほんまに読んでほしいわ。最近江戸っ子の時代物しか読んでいなかったので、上方言葉が優しく染み入りました。

 

・「銀二貫」という題名がとっても地味だけれど、その額面は人を買った値段でもある。人の価値はお金では量れないけれど、買われた人間が大枚に値する人生を送れているかどうかというのが本作の主題でもある。巧いよなあ。そして、羊羹が食べたくなります。

 

 

 

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・いつのまにか「ゼロ」シリーズになっとる・・。「生存者ゼロ」は一晩で読み終えたくらい興奮したし、「ゼロの迎撃」は昨今の北情勢を見るにもの凄く現実的でありそうなテロリズムの話。3作目だって期待に背くまいと購入したのでした。うん、なかなか読ませます。この作家さん。

 

・で、今回のクライシスはというと・・関東で大噴火が起こっちゃうというド派手な話です。実際ドッカンとマグマが噴出して何十万の人命が失われるという・・ボクの読書史上最大の犠牲者といってもいいかもしれないスケールでstoryは進みます。で、肝心なことを言いますと、これ、人災なんです。

 

・未読の方は「大噴火のどこが人災になるんや」というツッコミをされるのは当然です。一応分かったような分からないような科学的背景は示されておりますし、「じゃどーやって解決したんじゃい」というご指摘に対しては、「ブルース・ウィリスの『アルマゲドン』みたいな感じです」という返答が、痛々しいほど的確かと思います。ハハハ。

 

 

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・江戸城明け渡しに係る椿事。場内に居座る一人の旗本を巡って、様々な人物が奔走します。上野では彰義隊が汗を流しているというのに、この城の中では一人の男を追い出す算段の人間模様。狂言回しの加倉井クンがいつの間にかシャンとして幕閣と渡り合っているのも好感度が持てました。

 

・で、誰なんだ六兵衛は・・・。誰もがその疑問と格闘しながらページをめくるわけですが、ボクは15代将軍だったら面白いのにと思いながら読んでいました。そんなわけないか。尾張藩主や木戸孝允も登場。そして天朝様との対面。出来過ぎな感は否めないけれど、そうじゃなければ面白くないものね。

 

・結局のところのこの帰趨に賛否両論あるわけですが、ボクはがっかりしたにせよ「まあ、それでよかったのかもね」と納得して本書を閉じました。ラストの加倉井クンとのやり取りは名場面と言ってもいいでしょう。うん、鰻が食べたくなったわいな!