前回



✧*。*・゚࿐*⋆*🫧*・゚࿐*⋆*🫧✧*。














「久しぶりだね、智。」


「ああ、わざわざ悪いな。」



ここは

CLUB Gladiolusのスタッフルーム。

その場には

いつも通り組長と同行していた俺と、

組長、智さんしか居ない。


何も聞かされていないのは

どうやら俺だけで、

『寄るところがある。』そう言った組長の行き先が

ここだった。


(なんで・・・)


そう思う俺に

いつも通り同行しろと視線だけで指示する組長。

指示通り着いてきて、今に至るワケで・・・



いくら盃を交わした元兄弟とはいえ、

智さんはもうカタギだ。

それに組長自ら、なんてそうそうない。


不穏な空気だったら、と

内心ドキドキしていた俺は

2人の裏表のない和やかな空気に

面食らう。


(組長も、智さんもあんな顔するんだ)


そう思いつつ、

同席しなくても大丈夫そうな雰囲気に

外で待機するため一礼し、

組長を見送った。







- side O




翔と会うのは組を抜けてから二度目だ。


一度目は組を抜けてすぐだった。

目を覚まさないカズに

組の連中が居ない夜だけ

会いに行っていた時だ。


『店を任せたい』と言ってきた。


その時の俺は心に穴が空いたようで

何もする気が起きなかった。

カズと居た部屋も家具も全て売り払い

何もない部屋と病院へ行き来するぐらいの

生活をしていた。


『智の方が死にそうな顔してどうする』

そう言われた。

何日かぶりに鏡を見てみれば

確かに生きてるけど死んでいた。

カズに出会う前の俺と同じ顔をして

泣いていた。


''『智さん』『次はどこ行くの?』

『智さんおはよー』『おやすみ』『ねぇ、智さん』''


カズの声が、笑顔が、温もりが

恋しくて堪らないんだと気付かされた。

最初は鬱陶しいが勝っていたような存在だった。

それがいつの間にか

特別な存在になっていた。




「・・・いろいろと迷惑かけて悪い。」


「それはお互い様、でしょ?

それで・・・生田は、あの後どうなった?」


「さぁな。

・・・俺より翔の方が知ってると思ったが?」


「はははっ・・・!俺が手を回したのバレてたのか。」


「岡田会長の右腕を使う策と条件が出せんのは

翔しかいねぇだろ。

それに・・・お前の元兄貴だからな。」


「元、じゃねぇよ。

俺にとってアンタは今も兄貴だ。

破門なんか、したくなかったのに。」


そうボヤいて一呼吸する。


「・・・手は回したし、

松本にも聴いたが「知らなくてもいい」とか

言いやがるから。」


視線を逸しあの頃と同じ口調になっている翔に

懐かしさを感じて思わず笑えば、

ムスッとする反応まであの頃と同じだ。


「・・・翔、ありがとな。俺の我儘通してくれて。

あと、カズの面倒見てくれてありがとな。」


見開かれる瞳。

すぐ様その表情は

ぐっと何かを堪えるような顔になる。


「・・・バカ兄貴」


「んははは・・・なぁ、翔。

バカ兄貴の最後の我儘、聴いてくんね?」