前回



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智さんは松本組長の主治医の元で

治療を受けた。




「ねぇ、勝手に病院抜けて来て良かったの?」


「ああ」


「ああ、って。・・・病院、嫌いなだけでしょ」


「・・・フン」


鼻で笑って

自宅のドアを開け入っていく。




「・・・相変わらず、何にもないね」


智さんの香りに

泣きそうになって

もっと話したいことはある筈なのに

そんな事しか言えない。


智さんと会うのは

これで最後だと決めて来た。


4年前、俺のせいで失わせてしまったから。

立場と、居場所を。

そして、

俺が近づいた事で

4年の歳月も失わせてしまった。


それに、

俺が求めれば求める程、

智さんを苦しめるだけだ。


俺にとって智さんは

閉じ込められた記憶の鍵だったけど、

智さんにとって俺は

閉じ込めておきたい記憶だったはずだから、

きっと・・・



「これから、どうすんの?」


「明日からまた店に戻るだけだ。

侑李に任せっきりにし過ぎたからな。」


「そう。」


「そう言うカズはどうなんだ?」


「あ、あぁ・・・変わらず組長付きだよ」


「ウチに来ること、あんのか・・・?」


「智さんの店、トラブルないじゃん」


だから行くことないんじゃない?って意味で

いつも通りに言った、言えたはずだ。


ホントはもう二度と・・・


そう思ってる俺の唇は、

智さんので塞がれていた。


「っ・・・?!」


「ばァか、違ぇよ。俺の家ってこと」


「な、んで・・・?

智さんの家に来る理由、ないじゃん?

っ・・・。」


グイッと腰を抱かれて

智さんの香りと体温が

言わないつもりだった事を

暴いていく。


「やっぱりな。

もう会わないつもりだったんだろ?」


「ッ・・・!

・・・俺たちは、元に戻れる?」


「カズは、どうしたい?」


「・・・俺の記憶喪失は昏睡状態が原因って

言われたけど、記憶が戻って分かった。

俺は、全部忘れてやり直したかったんだ。

智さんとの出会いを。」


「・・・やり直してみてどうだった?」


「最悪だった。

冷たいと思ったら、

勘違いする程甘く抱くくせに、

俺が近づくとまた逃げるし。

・・・けど、記憶はないのに全身が求めてた。

思い出したくて仕方なくなった。」


あははって笑ってみせる。

そんな俺を智さんは何も言わないで

ただ俺の言葉を聴いてくれる。


「でも智さんの言う通り、

忘れたままでいたかった記憶はあった

けど、忘れたくない記憶もあった。

あの頃みたいに一緒に過ごしたい・・・ッ

でも、」


シャツの襟元や、袖口から覗く包帯が

言葉を詰まらせる。


「でもさ、俺は智さんを傷付ける。

それに、4年も経てば変わっちゃうでしょ?色々」


智さんの体を押して

その腕の中から抜け出した。