前回




✧*。*・゚࿐*⋆*🫧*・゚࿐*⋆*🫧✧*。













「はぁ・・・」


「にのちゃん、また溜息。どうしたの?」


「え、ついてた?」


「うん、今ので5回目。」


「ぇ、そんなに・・・?」


「うん。・・・会ってないの?」


「?・・・誰に?」


「ああ・・・えっと、」


言いずらそうにしてる雅紀の様子から

大野さんの事か、と思い当たる。


「・・・会ってないよ。」


(会いたいけど)


その気持ちをしまい込む為に

煙草に手を伸ばす。

それなのに、こんな時に限って

煙草は1本もない。


「・・・ごめん、煙草買ってくる」


「分かった。10分で帰ってきなよ?」


「うん」


今、俺と雅紀はシマの店を回り

売上の確認をしている最中だ。

午後から組長に同行しなきゃならないため

1つの店にあまり時間は割けないのだ。


近くのコンビニに駆け足で向かった。





「ありがとうございましたーっ」


店員の声を背に店を出る。

その直後、

俺の前に黒塗りの車が停る。


それを避けて行こうとした俺を

遮るように同業者の男が立ちはだかり

車の扉を開けた。

その中から声が掛けられる。


「久しぶりだな、和也」と。


その声に心臓が大きくドクンと鳴る。

振り向けないままの俺に構わず、

その声の主は話を続ける。


「記憶喪失ってのは、本当のようだな。

飼い主の事も忘れるとは、躾直しが必要か?

・・・乗れ。記憶を思い出させてやる。」


ポッカリと空いてしまった記憶を

取り戻したい俺にとって

その言葉は甘い誘惑だ。


ダメだ。と警鐘を鳴らし

この男を拒絶する体を

無理矢理動かしその男の方を向く。

その途端に

俺は車へと引きずり込まれた。


「ッ?!」


その勢いで俺は声の主に抱き着く形になる。

身を起こそうとしたが

腕を掴まれ腰に腕がまわる。


「・・・っ!?離せ、よ・・・ぅンんっ・・・!!」


男の唇が俺のを塞ぎ、

腰にまわってる手が

腹部の銃創を撫でる。


「ッ!」


俺は反射的に男の唇を噛んでいた。


「ハハッやってくれるな。」


そう言って男は俺の後髪を引っ張り

目線を逸らさせないように

俺の顎を掴んだ。


「お前は俺が

五十嵐組に送り込んだ駒なんだよ。

ま、大野を始末しろって命令に背くから

始末した駒でもあるけどな。」


男の手がまた銃創を撫でる。


鼓動が速まり、

息の仕方を忘れたのかと思う程

呼吸ができない。



'' 大野を始末しろ ''



その言葉と共に

『もう、お前に用はない』と

あの夢での言葉も蘇る。



思い出した。

全部。

そうだ。この人は