絵師/写真家 × 花魁/モデル


『俺が恋焦がれるお方は

俺を唯一抱かないお人。』

『俺はずっと、探していた。お前を。』

輪廻転生なお話。


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『・・・、ごめんね。・・・きっと迎えに来るから。ごめんね・・・』


(泣かないで、・・・さん)



「んん・・・」


いつの間にか眠ってしまっていた。


それにしても、随分と昔の夢をみた。


俺がここに売られた日の夢を。


夢の中でみた女性は俺の母だったのだろうか?


もう、顔なんて忘れてしまった。


自分のほんとの名前すらも・・・


なんでそんな夢をみたのか。


溜息をつきながら、


だるい身体を引きずって窓辺に腰掛ける。


空はまだ黒いが、雲一つない為、


満月で吉原の灯りが霞むほどだ。



『吉原』


朱色の橋を渡り、鳥居をくぐるとある遊廓の街。


一夜だけの夢を魅せる華やかなこの街は


『桃源郷』


なんて言われてるらしい。


俺のいる妓楼、『小鳥遊』は

特に最高級で上流階級じゃないと払えない金額だ。

それに相手をする俺たちにも階級がある。

下から端女郎、格子、太夫。

端女郎だってここの場合かなりする。

太夫ともなるとかなり高額だ。


「はぁ・・・」


先刻の客は最悪だった。


今日はおゆかり様(馴染み客)がくるから、


本来なら断れたが、


政府のお偉方の紹介だという事で断れなかった。


でも、


どう見たって金があるだけの野暮。


まぁ、金がものを言う世界だから。


上手く酔わせて指一本触れさせないつもりだった。


腕にはくっきりと掴まれた跡。


急に豹変して、押し倒されたのだ。


しかも、危うく薬を飲まされるところだった。


外で待機していた雅紀が


異変に気づいてくれなかったら・・・


そう思うとゾッとした。


「はぁ・・・」


着物を整えながら、何度目かのため息をする。


「月夜(かぐや)太夫、そろそろ。」


「ん。今行きんす。」


部屋を出て雅紀に手を引かれながら、


おゆかり様の元に向かった。