絵師/写真家 × 花魁/モデル
『俺が恋焦がれるお方は
俺を唯一抱かないお人。』
『俺はずっと、探していた。お前を。』
輪廻転生なお話。
‥✩.*。.:*‥✩.*。.:
『・・・、ごめんね。・・・きっと迎えに来るから。ごめんね・・・』
(泣かないで、・・・さん)
「んん・・・」
いつの間にか眠ってしまっていた。
それにしても、随分と昔の夢をみた。
俺がここに売られた日の夢を。
夢の中でみた女性は俺の母だったのだろうか?
もう、顔なんて忘れてしまった。
自分のほんとの名前すらも・・・
なんでそんな夢をみたのか。
溜息をつきながら、
だるい身体を引きずって窓辺に腰掛ける。
空はまだ黒いが、雲一つない為、
満月で吉原の灯りが霞むほどだ。
『吉原』
朱色の橋を渡り、鳥居をくぐるとある遊廓の街。
一夜だけの夢を魅せる華やかなこの街は
『桃源郷』
なんて言われてるらしい。
「はぁ・・・」
先刻の客は最悪だった。
今日はおゆかり様(馴染み客)がくるから、
本来なら断れたが、
政府のお偉方の紹介だという事で断れなかった。
でも、
どう見たって金があるだけの野暮。
まぁ、金がものを言う世界だから。
上手く酔わせて指一本触れさせないつもりだった。
腕にはくっきりと掴まれた跡。
急に豹変して、押し倒されたのだ。
しかも、危うく薬を飲まされるところだった。
外で待機していた雅紀が
異変に気づいてくれなかったら・・・
そう思うとゾッとした。
「はぁ・・・」
着物を整えながら、何度目かのため息をする。
「月夜(かぐや)太夫、そろそろ。」
「ん。今行きんす。」
部屋を出て雅紀に手を引かれながら、
おゆかり様の元に向かった。
続