声と音
オリンパスのCMはなんとなく気になる。
映像や画像は何気なく見えるものがあるが、それ以上に、音や声は、不意に聞いてしまうことが多い。見るものより、聞くもののほうが選びにくいのである。
真田広之の声は、なんとなく気になる。
好き嫌いでなく、なんだか、やり過ごせない感じで耳に入ってきて、つい聞いてしまう。
普段は忘れているけれど、そういえば、好きな部類の役者だとその都度思い出し、CMが終わるとまたそのことも忘れてしまう。
ずっと昔、一度、職場のアルバイトの青年が、店に彼が来てると息せき切って私のいた部屋へ知らせに来たことがあった。せっかく知らせにきてくれたからと、階段を降りてそのご尊顔を拝しに行った。
そして、彼の姿をみたとき、私は、そのまま、それ以上近づくのをやめ、踵を返して部屋に戻った。
アルバイトの青年は、なぜサインをもらわないのか、自分はもらったとうれしそうに話していた。
私の見た真田広之は、そのとき幼い子を連れていて、店の奥の人のいない場所で、その子と二人きりだった。
高い高いをして、笑顔だった。ように見えた。はっきりと表情が読み取れるほど近寄る間もなく、その親子の様子が、なにかとても休日の親子の様子に感じられた。
彼が楽しい日々を送っているかどうかは知る由もないけれど、一人の人の休日を邪魔したくないような気持ちになり、もし自分だったら邪魔されたくないからだろう、そのまま、近寄るのをやめてしまった。
彼の節目がちな、歯を見せない笑顔が好きだ。何かそこに愁いを感じて、そのせいで、逆に暖かさを感じる。
彼の出演した作品は多数あるが、一番好きなのは、『こんな恋のはなし』、次に『新・半七捕物帳』である。
このごろ、よくCMから彼の声が聞こえるので、ようやくいろいろ思い出した。
