『よそゆき顔で』
「私は明日から変わるんだから
悪ぶってた思い出は捨てる」
学生時代の写真を久しぶりにみていたら、思い出した。
大好きだった恋人と別れてしまったのは、流されて結婚しようとしたわけでもなく、若かったから、という理由だけでもなかったこと。
ある日、その写真に写っていた女友達から聞いた。
7、8人の仲間が写っているそのうちのひとりが、私の恋人と密かに交際を始めたらしいと。
女友達は、どうしようか迷ったけどやっぱり話したほうがいいと思って、そして、ちゃんと彼と話したほうがいいよと進言してくれた。
私は格別衝撃も受けず、そして、彼女の話の真偽のほどを確かめる気にもならなかった。
なんとなく、もしかしたら、そんなこともあるかもしれないと、本能が既に感じていたから。
言葉でない伝達が、眼に見えない情景が、時として、人の感性に働きかける。
「らしい」
女友達も確かな事実を見聞きしたわけではない。
私は、その噂や真相よりも、彼を、そして、その相手だという仲良しの友を疑う自分の方が、むしろ疎ましかった。
相手が信じられないわけではない。信じる自分の心を疑ってしまうようで、どうして愛することができよう、愛されることができよう。
「よそゆき顔ですれ違うなら
二度と会わないほうがいいのね
よそゆき顔ですれ違うなら
それまでだった恋」
幸か不幸か偶然か必然か、よそゆき顔ですれ違う機会はいまだをもって訪れない。
