テリトリー
薬屋で働く青年。
いつも箒とちりとりを手にして街を掃除している。彼の範疇はおおよそ半径300メートル。その範囲内、昼夜を問わず、落ち葉、吸殻、塵芥、掃いては清め、ちりとりに収める。毎日、毎日、毎日だ。朝6時から夜は10時まで、彼の勤務、清掃は、断続的に行われる。たまたま店の前にいてベンディングマシンの商品補充をしているときなどに店に客が訪れたなら、箒とちりとりを手放し、直ちにレジの前にて待機する。しかしながら、それは、彼の一日の勤務時間のうちのわずかな偶然のひととき。
彼の本来の仕事はなんぞや。彼の白衣は何のために着用しているものぞ。
経営者は彼自身や否や。
私には無関係なこと。
オーナーがそれでよしとするなら誰が何の異論を唱える権利や必要があろうか。
彼が店を留守にしてまで、落ち葉、吸殻、ちりあくた、喀痰、汚物、等々を収集するのを誰が止められようか。
これも、また、否。
彼に与えられた権利であり必要性だ。
願わくば、世の人々が、この街に無造作に廃棄物を増やすなかれ。
自分の家でなければ何をどこへ放ってもかまわないのか。
残念ながら、おまえたちと私たちは同じこの地球というひとつの家に暮らしていて、いまのところ、転居為し得る他の惑星を知らない。投棄するおまえたちと私たちの同居は誰にも拒否できない厳然たる事実なのだ。
私の家をよごすな。私の部屋をけがすな。彼の白衣の青年に薬売りの仕事を本分とわきまえさせよ。