一月末、愛知県美術館で開催されている「コートールド美術館展 魅惑の印象派」へ行ってきました。コートールド美術館は印象派・ポスト印象派の殿堂と言われているロンドンの美術館です。今回は美術館の改修工事のため、普段はまず貸し出されることのない名作が来日し、展覧会が行われています。

 

 

 

 

 コートールド美術館の創設者サミュエル・コートールドはイギリスの実業家で、卓越した審美眼を持つコレクターでもありました。フランス近代絵画の魅力を母国に伝えたいと、1920年代を中心に精力的な美術品の収集を行っていたそうです(展覧会HPより)。今回の展覧会では選りすぐりの絵画と彫刻、約60点が展示されています。

 

 

 

 

 今回の記事では前後編に分け、私が気になった絵画作品(一人の画家につき一点)を作品リスト順にご紹介していきます。画家の名前や絵画のタイトルは展覧会の作品リストの表記をそのまま使用しています。

 

 

 

 

『花瓶』 1881年


クロード・モネ(Claude Monet)作

 

 

 まずはモネの静物画からご紹介していきます。クロード・モネは印象派を代表するフランスの画家。「印象派」という名前の由来となった『印象・日の出』という代表作をご存じの方も多いと思います。「睡蓮」のシリーズをはじめ、作品のほとんどを戸外で制作していたモネですが、1880年代の前半は静物画を多く描いていたそうです。
 
 この絵を見た瞬間、実にシンプルな感想ですが「あ、綺麗」と素直に思いました。ピンクの花も背景も多様な色彩で描かれた美しい一枚です。モネは1881年にこの絵に着手したものの、その後なかなか筆が進まず、40年も手元に置いたままだったそうです。彼が80歳の頃にようやく絵が完成し、コートールドに売却されました(因みにコートールドが購入したモネ作品の第一号です)。
 
 
 
 
『税関』 1890年頃

アンリ・ルソー(Henri Rousseau)作
 
 
 今回の展覧会で一枚だけ展示されていたアンリ・ルソーの作品。ルソーはフランス「素朴派」に属する画家です。素朴派とは画家とは別の職業に就いている人が、正式な美術教育を受けないまま絵画を制作していることを意味する言葉です。ルソーはパリ市の税関に20年以上務め、仕事の余暇に絵を描いていたことから「日曜画家」とも呼ばれています。
 
 この作品はルソーが務めていた税関を描いたものだと言われていますが、実物そのものではなく、彼の想像がいくらか加えられているそうです。奥行きがなく平坦で、どこか現実的な部分に欠ける世界観がいかにもルソーらしいですね。技術的なことはともかく、ルソーにしか描けないこの一枚は実に魅力的だと感じました。
 
 
 
 
『フォリー=ベルジェールのバー』 1882年

エドゥアール・マネ(Edouard Manet)作
 
 きっと多くの人が一度は目にしたことがある、今回の展覧会の目玉とも言えるマネの大作です。私はこの絵が展示されると知り、絶対に観に行こうと心に決めていました(笑)フォリー=ベルジェールはパリで人気だったミュージックホールで、中央に描かれているのはそこで働く「バーメイド」の女性です。
 
 バーメイドは物憂げな雰囲気をまとい、その表情から彼女が何を考えているのか読み取ることは困難です。当時、作家のモーパッサンはバーメイドのことを「酒と愛の売人」と表現していました。つまり、女性が自立することが難しかった時代に彼女も自らを売って生活をしていたと想像できます。男性に見初められることができなければ生きていけないという、そんな不安と焦りが彼女の表情に表れているのかもしれません。
 
 この作品はショーの観客とカウンターに置かれている静物の描き方の対比や、鏡を使った巧妙な構図など、とても計算されて描かれた一枚です(詳しい説明は割愛します。すいません)。そこに何が描かれているのか、パッと見ただけでその意図を読み取ることは難しく、実物をじっくりと観察・考察することをお勧めしたい一枚です。因みに、この作品はスペインの画家・ベラスケスの『ラス・メニーナス』をもとにして描いたと言われています。
 

後編へつづく