前回の記事に引き続き「コートールド美術館展」の後編です。
『傘をさす女性』 1870-1872年
エドガー・ドガ(Edgar Degas)作
フランス印象派の画家であるドガは踊り子(バレエダンサー)を多く描いたことで有名ですが、今回私が興味を引かれたのは素早い筆致で傘をさす婦人を描いた一枚です。この絵は未完成らしく、ラフな印象を受けるのですが、私個人の目にはとても魅力的に映りました。何かこう、未完成なのにきちんと絵として成立しているような感じがします。
こちらの絵はかなり早い段階で制作が中断され、そのままになってしまったようですが、女性の輪郭などはとても丁寧に描かれています。光と陰影を探求し続けたドガの、制作途中の絵を見られたというのは、なかなか貴重な経験だったと思います。この絵の他にも『窓辺の女』やいかにもドガらしい『舞台上の二人の踊り子』など、彼の作品を何点か見ることができました。
『裸婦』 1916年頃
アメデオ・モディリアーニ(Amedeo Modigliani)作
イタリアの画家で彫刻家でもあるモディリアーニは「エコール・ド・パリ(パリ派)」の一員として有名な人物です。エコール・ド・パリとは20世紀前半、各地からパリのモンマルトルやモンパルナスに集まり、ボヘミアン的な生活をしていた画家たちのことを指す言葉です。他にもレオナール・フジタやシャガールなど、出身国も画風も個性的な画家たちがパリ派の主な人物として知られています。
正直、モディリアーニの画風は独特で少し苦手なのですが、この裸婦像は素直に素敵だなと思いました。モデルはハーバート・ビアーボーム・ツリー卿(俳優、劇場の支配人をしていた人らしいです)の娘、女優でモデルのアイリス・ツリー。当時は猥褻な絵だとして警察がモディリアーニの個展を強制終了させるというトラブルがあったらしいです。現代人とは随分違う感覚でこの絵が受け取られていたことがわかるエピソードですね。
『白いブラウスを着た若い女性』 1923年頃
シャイム・スーティン(Chaim Soutine)作
今回の展覧会で強烈な個性を放っていたこちらの一枚。私は最初、この絵を目にした時、思わず「え・・・?」と困惑してしまいました(笑)スーティンはロシアの出身で、先ほどご紹介したモディリアーニと同じエコール・ド・パリの画家の一人です。私は今回の展覧会で初めて彼の存在と作品を知りました。
女性の顔はかなりデフォルメされ、上目遣いで何か言いたげなその表情を見ていると不安を覚えてしまいます。スーティンがどういう意図でこの絵を描いたのかはわかりませんが、wikipediaの情報によると、彼の作品はどれも激しく歪められ、荒々しいタッチで、絵具が幾重にも塗り込まれているという特徴があるみたいです。何はともあれ、一度見たら忘れられない一枚であることは確かです。
『テ・レリオア』 1897年
ポール・ゴーガン(Paul Gauguin)作
最後にご紹介するのはタヒチ語で「夢」というタイトルがつけられたゴーギャンの作品です。フランスへ作品を送る船の出港が遅れ、その期間を利用して新たに制作されました。ゴーギャンは10日間ほどで制作したこの一枚を「制作を急いだにも関わらず、前の数点よりももっと良いと思う」と友人の手紙に書いていたそうです。
壁の装飾などはゴーギャンの想像で描かれているようで、現実と幻想が入り混じったような雰囲気が画面から漂ってきます。特別変わった部分があるわけでもないのに、何だか「夢」というタイトルがぴったりだなと思いました。展覧会では他に『ネヴァーモア』というゴーギャンの作品が展示されています。『テ・レリオア』より約3週間前に描かれたものだそうで、コントラストが強く、こちらもミステリアスな雰囲気に満ちた作品となっています。
*
以上でコートールド美術館展の記事はおしまいです。展覧会に行ってから日が経ってしまいましたが、何とか記事をまとめることができて安心しました。ご紹介してきた作品以外にもセザンヌの『カード遊びをする人々』やルノワールの『桟敷席』など、多くの名作が展示されています。愛知県美術館では3月15日(日)まで、その後3月28日(土)からは神戸市立博物館を巡回する予定なので、機会があればぜひ足を運んでみてください^^



