8月某日、名古屋市博物館で開催されている「魔女の秘密展」へ行ってきました。この展覧会では魔女をテーマとした絵画を始め、魔除けのまじない道具、「魔女裁判」に関する書物や拷問道具など約100点が展示されており、中世ヨーロッパの魔女像から現代日本の漫画に登場する魔女のキャラクターまで幅広く紹介されています。

余談ですが、今回は展示リストが手に入りませんでした。。係の方に聞いたら「切らしておりまして・・・」との事だったので、予想以上の来場者数(先日3万人を超えたようです)に用意していたリストが足らなくなってしまったのかなと思います(今は新たに補充されているかもしれませんが)。
それはさておき、この記事では「魔女の秘密展」で展示されている代表的な版画と絵画を3つご紹介したいと思います。

『空を飛ぶ魔女』1500-1503年
アルブレヒト・デューラー(Albrecht Durer)作
悪魔の化身である雄山羊にまたがり、空を飛ぶ老いた魔女を描いた版画。実際のサイズは11.4×7cmで上の画像とあまり変わらないぐらいの小さな作品です。魔女は雄山羊に後ろ向きに乗っていて、本来なら雄山羊の飛んでいる方向とは逆に(左に)髪がたなびくはずですが、この絵ではそれがあべこべになっています。
画面の右下にあるデューラーのサイン(イニシャルのAとDを表したもの)も「D」が反対に描かれていたりして、この絵がどこか不可思議なものである事を感じさせます。また、画面左上の隅に描かれている雹(ひょう)は黒魔術、特に天候を左右する魔術(降雹術)を表現していると言われています。

『ワルプルギスの夜』 1862年
グスタフ・アドルフ・シュパンゲンベルク(Gustav Adolph Spangenberg)作
タイトルの「ワルプルギスの夜」とは4月30日から5月1日に中欧・北欧で行われる行事で、「魔女の祭典」というイメージが強いですが、元々は春の到来を祝うお祭りです。「ワルプルギス」という名前はキリスト教の聖女・ワルプルガ(5月1日が彼女の何らかの記念日)に因んで付けられたそうです。
国によって内容が異なりますが、この絵を描いたシュパンゲンベルクはドイツ人なのでドイツの伝承を記しておくと「ヴァルプルギス・ナハト(=ワルプルギスの夜)」は4月30日の日没から5月1日未明にかけての夜を指し、魔女たちがブロッケン山に集まって春の到来を待つと伝えられています。絵にあるように今でもかがり火を焚く風習があるそうです。

『サバトへ行く前のレッスン』 1880年
ルイ=モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル(Louis Maurice Boutet de Monvel)作
最後は個人的に一番印象に残ったこちらの一枚を。タイトルにある「サバト」とは平たく言えば魔女の集会の事です。おそらくサバトへ行くのが初めてなのか、若い魔女が年老いた魔女に箒の使い方を伝授されている場面が描かれています。暗いトーンの絵が多い中、彼女の白い肌が余計に美しく滑らかに見えました。
若い魔女だけが裸な理由はよくわかりませんが、西洋では19世紀の終わり頃までリアルな女性の裸体を描く事が禁じられていたので(聖書や神話の登場人物はOKでした)「魔女」という口実をつけて裸体を描いたのではないのではないかと推測されています。一見普通の女性ですが、箒や床に転がった骸骨があるからこそ彼女は魔女だと言えるようです。
※
絵画の紹介ではほとんど触れませんでしたが「“魔女”とは誰だったのか?」がこの展覧会のテーマとなっています。宗教改革や疫病などの歴史的背景と共に、魔女狩りや魔女裁判がどういうものだったのかが様々な展示品と共に解説されています。
理不尽で悲しい歴史を経て、現代ではファンタジーの中に存在する魅力的なキャラクターになった魔女。漫画『FAIRY TAIL』の作者である真島ヒロさんを始め、色んな漫画家の魔女のイラストも展示されていますので、漫画・アニメファンの方も楽しめると思います。
最近は浮世絵の展覧会にばかり行っていたので西洋絵画が何だか新鮮に映りました。「魔女の秘密展」は名古屋市博物館で9月27日まで開催されています。実際に薬として使われていたミイラの頭部や奇形動物の剥製も展示されているので、そういったものが苦手な方にはお勧めしませんが、魔女の世界に興味がある方はぜひ足を運んでみて下さい^^