10月某日、名古屋市美術館で開催されている「英国の夢 ラファエル前派展」へ行ってきました。この展覧会ではリバプール国立美術館(リバプール市内及び近郊の3つの美術館と4つの博物館の総称)の所蔵品からラファエル前派の流れにある作家たちの代表作約70点が紹介されています。


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 「ラファエル前派」とは1848年、イギリスでロイヤル・アカデミーの学生であったジョン・エヴァレット・ミレー、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントの3人の画家によって結成されたグループの事です。「芸術は自然に忠実でなければならない」をモットーに、ルネサンスの巨匠ラファエロ以前の美術を理想としていました。


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 美術館の外にはウォーターハウス作『デカメロン』の看板が。ラファエル前派はそれまでのイギリス画壇を支配してきたアカデミックな絵画とは異なり、豊かな物語性と想像力を喚起するような新しい絵画世界を創造しました。グループとしての活動は数年と短い期間でしたが、この運動は後の作家たちに大きな影響を与え、「象徴主義」の流れを形成していく事になります。

 今回は私の好きな作家であるジョン・エヴァレット・ミレーやジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの作品を見られるとあって開催前から楽しみにしていました。この記事では前・中・後編に分け、展示作品をいくつかご紹介していきたいと思います。


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『ブラック・ブランズウィッカーズの兵士』 1860年

ジョン・エヴァレット・ミレー(John Everett Millais)作


 まずはミレーの代表的な作品から。ラファエル前派の創始者であり、ヴィクトリア朝(1837-1901年)芸術を代表する画家。彼の代表作である『オフィーリア』を知っている方は多いかと思います。ブラック・ブランズウィッカーズとはイギリス・オランダの連合軍と同盟を組んでナポレオンと戦った部隊の事です(壁に掛けられた絵にナポレオンが描かれています)。

 この絵では出兵前夜の兵士と恋人の別れの場面が描かれています。恋人たちが別れを強いられるというのは、ミレー作品の主要なテーマの一つであり、以前ブログにアップした『聖バルトロマイの祝日のユグノー教徒』もそれにあたります。悲しいテーマですが、兵士の制服の黒、女性のドレスの白とリボンの赤、背景の緑と非常にはっきりした色使いが印象的でした。


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『良い決心』 1877年

ジョン・エヴァレット・ミレー(John Everett Millais)作


 始めは「何か地味だな~」と思いつつ、気づいたらしげしげと眺めていた作品。何が「良い決心」なのか、本を手にしたまま彼女は何に視線を向けているのか気になるところです。ミレーに関してドラマチックな情景や細部まで書き込まれた絵の印象が強かったせいか、素朴で情報量も控えめなこの絵はある意味新鮮に映りました。後から少し調べてみたのですが、この作品に関する詳しい説明を見つける事はできませんでした。


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『祈りの後のマデライン』 1868年

ダニエル・マクリース(Daniel Maclise)作


 アイルランド出身の画家であるマクリース。彼がイギリスの詩人ジョン・キーツの詩『聖アグネス祭前夜』を題材にして描いたのが『祈りの後のマデライン』です。『聖アグネス祭前夜』はマデラインとその恋人・ポーフィローの恋物語で、両家の反発や許されない恋といった、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に似た設定の物語になっています。

 祈りの後で眠る準備をしているマデライン。髪飾りを外す仕草が色っぽいですね。絵を見ただけではわかりませんが、寝室のクローゼットに恋人のポーフィローが隠れているという場面だそうです。この画像は細部の様子がわかる明るさになっていますが、実際にはもっと陰影が強かったように思います(美術館の照明の加減かもしれませんが)。


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 というわけで私が記憶している明るさに加工してみました(笑)この絵をぱっと見た瞬間、月明かりに照らされたマデラインの肌の白さが際立っていました。改めて見るともっと暗めだったような気もします。背景の美しいステンドグラスや彼女の服が闇に紛れてしまいますが、幻想的でロマンチックな雰囲気が素敵な一枚でした。


中編につづく