前編中編とご紹介してきた『英国の夢 ラファエル前派展』最後の記事です。


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『フラジオレットを吹く天使』 1878年

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ(Edward Coley Burne-Jones)作


 この作品は今回の展覧会のチラシやチケットにも使われています。作者のバーン=ジョーンズは画家でありデザイナーでもあったイギリスの美術家です。絵画以外にもタイル、ジュエリー、タペストリーといった工芸品や本の挿絵、舞台衣装など幅広く手懸けていました。

 鮮やかな赤と青の衣を身に纏った天使が、フラジオレットという木管の古い楽器を演奏している光景。天使の頭の後ろにある光輪が夜空に浮かぶ満月のようにも見えます。この画像ではよくわかりませんが、沈んだ青の背景に金色の光の粒が散らばっていて、それがまるで星屑のようでした。優雅な色彩と天使の姿が何とも幻想的な一枚です。


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『楽園追放』 1900年

ジョン・ロダム・スペンサー・スタナップ(John Roddam Spencer Stanhope)作


 旧約聖書『創世記』においてアダムとイヴが禁断の果実を食べてエデンの園から追放されるという有名なシーンを描いた一枚。嘆きながら楽園を出ていくアダムとイヴに天使ケルビムが険しい表情を向けています。背景の植物が実に詳細に、装飾過多気味に描かれたこの絵は、発表当時、時代遅れで不自然だと酷評されたそうです。

 確かに少々描き込み過ぎな気もしますが(苦笑)だからこそ素直にすごい描写力だなと感心しました。作者であるスタナップ(イギリス出身)は聖書、神話、寓話、現代を主題とした作品を描き、これまで紹介してきたワッツやバーン=ジョーンズと共に、多くの場合、ラファエル前派の第二波とみなされているようです。


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『エコーとナルキッソス』 1903年

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(John William Waterhouse)作


 神話や文学作品に登場する女性を題材にする事が多かったウォーターハウス。この作品ではギリシャ神話に登場する美青年・ナルキッソスと「こだま」の妖精であるエコーの物語が描かれています。ナルキッソスは「ナルシスト」の語源にもなった人物で、泉に映る美しい若者が自分の姿だとは知らずに魅了されてしまいます。

 彼に恋をしているエコーですが、ゼウスの妃であるヘーラーを怒らせて自分から口をきく事が出来ないという罰を与えられ、相手の言葉を繰り返す事しか出来ません。ナルキッソスをただ見守る事しか出来ないエコー。一方のナルキッソスはその泉から離れられられなくなってしまいます。叶わぬ恋に身を焦がす2人の情景が切なく美しい一枚です。


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『流れ星』 1909年

ジェイムス・ハミルトン・ヘイ(James Hamilton Hay)作


 最後は今までとは雰囲気の異なる一枚を。街の灯がほとんど消え、一面に雪が積もった夜。少々分かり辛いですが、絵の右上にオリオン座が輝き、中央辺りに一筋の流れ星が描かれています。余計なものが何もないシンプルな構図。「自然に忠実でなければならない」というラファエル前派のモットーがよく表れている作品だと思います。

 ヘイはリバプールで建築家の息子として生まれ、3年間父親の事務所で働いた後でアートスクールに通い絵を学び始めたそうです。日本の浮世絵からも影響を受けていたようで、彼の作品の多くにそれが反映されています。彼は自然と直接触れ合う事に努め、景観の正確な雰囲気や感覚を求めて広く旅をしていました。


 明治時代、日本の画家や文学者にも影響を与えたというラファエル前派。グループの活動期間こそ短かったものの、名作がたくさん生まれた時代だったのだと思います。ミレイやウォーターハウスの絵が見たくて訪れた展覧会でしたが、他にも素敵な作品が多く個人的にとても満足する事が出来ました(どの作品を記事にするか選ぶのに苦労しました^^;)。

 「英国の夢 ラファエル前派展」は12月13日までは「名古屋市美術館」で、その後12月22日から翌年3月6日まで東京の「Bunkamura ザ・ミュージアム」で開催される予定です。彼らの作品に興味が湧いた方はぜひ一度足を運んでみて下さい。最後までお付き合いいただきありがとうございました^^