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 数日前、嫌な夢を見て夜中に目が覚めた。午前3時くらいだったと思う。夢見が悪いのは久しぶりだった。夜中に目を覚ますというような事も滅多にない。目が覚めてからしばらくは見た夢の内容を覚えていたが今はほとんど忘れてしまった。嫌な夢というより、自分がひどく怯えていたような気がする。何に怯えていたのかは覚えていないが。

 もう二月も終わりだと気がついて、慌ててこの文章を書き始めた。毎月毎月、どうしても書かなければいけないというわけでもないのに律儀に続けているエッセイ(のようなもの)。ぼんやり日々を過ごしていると書きたい事がなくて地味に悩む。四月から三月までの一年のつれづれ。切りがいいので来月で止めてしまおうかとも思っている。

 文頭に戻って夢の話。子供の頃、それこそまだ両親と同じ部屋で寝ていた小さい頃に見た悪夢を今でも私は覚えている。現実と夢が重なったような、どちらかというと幻覚や幻影に近い夢。私はその夢の事を今まで誰にも話した事がない。たぶんこの先も誰にも言う事はない。何故かわからないが、話すべきではないと勝手に思い込んでいる。

 家族が寝静まっている中で、自分だけ悪夢で目が覚める。今が何時かはわからない。子供の頃の私は夜中の時間の感覚がない。暗闇に目が慣れ、薄っすらと部屋の様子が見えてくる。いつもと変わった所はない。それなのに不安がまとわりついて離れない。家族が起きる気配はない。私は自分だけ違う世界に来てしまったように感じ始める。

 同じ現実に存在しているのに、眠っている人間と起きている人間には別次元にいるような距離があって、子供だった私にはそれがとても恐ろしかった。声をかけて、体を揺すれば家族は目を覚ましてくれるのに、そうする事が出来なかった。出来るだけ母親の近くに身を寄せて、もう一度目を閉じる事も出来ずにただじっと耐えていた。

 今でも恐ろしいという感情はあるが、再び眠るのにそう時間はかからない。子供の頃に知らなかった眠りや夢のメカニズムを大人になってから色々と理解して、夜という時間にも慣れてしまったからだと思う。得体の知れない物に対して耐性がついたのかもしれない。それは大人になって良かったと思う事の一つだ。

 私がはっきりと覚えている子供の頃の悪夢も、時間が経つにつれて「恐ろしいもの」から「不思議なもの」へと捉え方が変わっていった。あれは一体何だったのだろうと思い出す事はあっても、それを深く追究しようとは思わない。あの頃、どうしようもなく恐ろしかったものでさえ、時間の経過と共にどうでもよくなってしまった。

 子供の頃、悪夢で夜中に目が覚めた時の話をいつか何かの形で書こうと思っていた。先月と同様、あまり面白くない話になってしまったけれど、ずっと頭のどこかにつかえていたものが消化できて良かった。『氷点下の海で眠る』というタイトルは新しい小説に使うつもりだったけれど・・・まぁ、いいか。


photo by yellow bird