前編中編に続き「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」最後の記事です。
 
 
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『日没を背に種まく人』 1888年
 
フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)作
 

 この作品はジャン=フランソワ・ミレーの代表作『種をまく人』から着想を得て描かれたもので、二枚の絵を見比べてみると、種をまく人物のポーズがミレーのものとよく似ていることがわかります。また、リンゴの木がキャンパスを分断するように配置された珍しい構図は、安藤広重の浮世絵『亀戸梅屋舗』から借用したものだと言われています。
 
 構図に加え、人物の後ろで強烈な光を放っている黄色い太陽もとても印象的です。タイトルに「日没」とあるのでこれは確かに太陽なのですが、私にはどういうわけかスーパームーン(大きな満月)のように見えました。おそらく「月は黄色い」という色のイメージによるものだと思いますが、日本人の自分とオランダ人のゴッホとでは目に映る色もいくらか違っていたのかなぁとしみじみ感じました。
 
 
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『花咲くマロニエの枝』 1890年
 
フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)作
 

 中編からゴッホの絵が続いていますが、ご紹介するのはこれが最後の一枚です。ゴッホは晩年をフランスのオーヴェールで過ごし、彼の世話人だった医師、ポール・ガシェの庭で花の絵をいくつか描いています。この『花咲くマロニエの枝』もガシェの庭に置いてあった赤いテーブルの上に花瓶を置いて描いたものだと言われています。この絵を描いた1890年の7月、ゴッホは自らの手で命を絶ってしまいました。
 
 小さく可愛らしい花と、それとは反対に力強く伸びるマロニエの枝。背景は鮮やかなプルシャン・ブルーのハッチング(絵画などにおいて一定の面を平行な線で埋める技法)で描かれています。私にとってこういうゴッホの絵は異質なんですよね。美しいかどうかはわからない、でも目が離せなくなるというか・・・。この作品はゴッホの死後、弟のテオによってガシェ医師に寄贈されたそうです。
 
 
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『コンフェッティ』 1894年
 
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec)作
 

 ポスターを芸術の域にまで高めたフランスの画家、ロートレック。作品としては『ムーラン・ルージュのラ・グーリュ』のポスターなどが有名ですね。この作品はロンドンの紙吹雪(コンフェッティ)メーカーから依頼されて作成されたポスターです。シンプルな色使いと抽象的なデザイン、走り書き(描き?)のような軽やかさが何ともお洒落な一枚です。
 
 ロートレックは同じくフランスの画家でイラストレーターだったジュール・シェレの影響を受けていました。この作品もシュレの『Halle aux chapeaux』というポスターに描かれている少女をベースにしたと言われています。シュレの描く若い女性は「シェレット(シェレ娘)」と呼ばれ、当時の流行となっていたそうです。
 
 
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『肘掛け椅子の上のひまわり』 1901年
 
ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)作
 

 これまでいくつかゴッホの作品を紹介してきましたが、そのゴッホと深い関わりがあったのがこの作品の作者であるゴーギャンです。フランス、ポスト印象派の画家であったゴーギャンはゴッホの絵に感銘を受け、わずか9週間ではありますが、南仏アルルにあるゴッホの「黄色い家」で共同生活を送りました。絵画において「ひまわり」と言えばゴッホが連想されるように、この絵もまた彼と深い関わりがあると言われています。
 
 ゴッホはゴーギャンと共同生活をする際、彼のために立派な肘掛椅子を用意し『ゴーギャンの肘掛け椅子』という作品を残しています。ゴッホの死後、タヒチへと渡ったゴーギャンは自身の死の二年前にこの絵を描きました。自分のために用意してくれた肘掛椅子と、ゴッホの分身のようなひまわり。ゴーギャンがゴッホをどのように思っていたのかはわかりませんが、最後まで彼を忘れることはなかったのではないかと感じられる一枚でした。
 
 
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『睡蓮の池、緑の反映』 1920-26年
 
クロード・モネ(Claude Monet)作
 

 最後の一枚は日本初公開だったモネの作品です。印象派を代表するフランスの画家である彼は、フランス郊外の街、ジヴェルニーで家を借り、その庭園で多くの睡蓮の絵を描きました。この作品は幅4mを超える大作で、元々はフランス政府に提供するために制作されたそうです。その時にモネが必要以上に作品を描き、ビュールレ氏が購入したこの絵画はその内の一点にあたるようです。
 
 最初にこの絵を見た時、大画面に描かれているのに、何となくトリミングされた構図のように感じました。深い青緑の水面に睡蓮の花が浮かび上がっていますが、輪郭は曖昧で形も色も溶け合ってしまっているような印象を受けます。モネが書いた睡蓮の作品は200点以上もあり、評価にバラつきがあるそうですが、この絵は色彩が美しく素直に素敵な一枚だなと思いました。
 
 
 以上で「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」の記事はおしまいです。久しぶりに展覧会に行ったこともあり、いつも以上にたくさんの絵を記事に詰め込んでしまいました。とても混雑していたのでゆっくり好きなだけ見るというわけにはいきませんでしたが、魅力的な作品がたくさん見られてとても充実した展覧会だったと思います。長々とした記事に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました^^