太陽が傾きかけた頃、平和公園まで散歩に出かけた。夕方とはいえ、暴力的な昼間の暑さがまだ辺りに漂っていて、風は生温い。駐車場に車を止め、メタセコイヤ広場の方へ歩いていく。
メタセコイヤよりも、広場の中ほどに立っている別の木が目に留まる。木々の間から夕陽が差し込んでいて、思わず目を細める。
遊歩道を進んでいくと広場の先に猫ケ洞池(ねこがほらいけ)が見えてくる。何だか可愛い名前の池だ。逆光で暗くなるカメラの液晶画面に試行錯誤しつつ、写真を撮りながら池へと向かう。
池のほとりまで来て、メタセコイヤ広場を振り返る。緑の、開けた気持ちの良い空間だ。時々、犬の散歩をしている人やランニングをしている人とすれ違う。
何となく池の周りを歩きながら、足を止めて対岸の風景を写真におさめる。豊かな木々の中に、大きなマンションが目立っている。緑と共にある都市景観。こういう風景が好きだ。
緩やかに波打つ水面、反射する夕陽のオレンジ。ありきたりな写真ではあるが、自分で撮ったのは初めてかもしれない。池の周りには釣りをしている人や、ぼんやりと景色を眺めている人がいる。
池の周りを少し歩いて、私も地面に腰を下ろす。左側には釣りをしているおじいさんと、ラグを引いて寝転んでいる若い女性がいる。彼女はサングラスをかけ、ノースリーブにショートパンツという格好をしている。彼女だけを見れば、何だか外国のリゾートといった雰囲気だ。
右側には中年の夫婦の姿がある。旦那さんは釣りをしていて、奥さんは電話で誰かと話している。コンクリートは昼間の太陽を吸収し、熱を持っている。座っているだけでじっとりと体が汗ばむ。Tシャツの下、デコルテの部分が濡れていくのがわかる。
夕陽が地平線に近づき、空の色が変化していく。空と水面が、青と薄いピンクに分かれていく。同じ写真を何枚も撮ってしまう。写真に撮ると、木々や建物が黒いシルエットに変わってしまう。実際、肉眼ではもっと子細に、電柱の形まではっきりと見えている。人間の目はよくできているなと、改めて思う。
後編へつづく






