前回に引き続き「大浮世絵展」で展示されている作品紹介です。中編は「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」でも展示されていた「冨嶽三十六景」など、再び葛飾北斎の作品を中心に記事にしていきたいと思います。
 
 
イメージ 1
 
 
『冨嶽三十六景 凱風快晴』 1831年前後

葛飾北斎作
 
 
 通称「赤富士」と呼ばれ冨嶽三十六景シリーズの中でも人気のある一枚。夏の早朝、富士山の山肌が朝日を受けて赤みを帯びた様子を捉えた作品で、「凱風(がいふう)」とは南風を意味するそうです。富士山を大きく正面から描き、シンプルな構図ながらも堂々たる雰囲気が伝わってきます。
 
 空の青、富士山の赤、樹海の緑、鰯雲と山頂に残った雪の白が実にバランスよく配色されていると思います。当時、浮世絵の風景画は「名所絵」と呼ばれていて、このシリーズの商業的成功により、名所絵が役者絵や美人画と並ぶジャンルとして確立したと言われています。
 
 
イメージ 2
 
 
『冨嶽三十六景 山下白雨』 1831年前後

葛飾北斎作
 
 
 「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」の記事で取り上げた『神奈川沖裏浪』、先ほどご紹介した『凱風快晴』と共に冨嶽三十六景シリーズの中で「三役」とされている一枚です。構図は『凱風快晴』と同じで富士山を正面から捉えていますが、見比べてみると画面を富士山が占める割合が異なっていることがわかります。
 
 「白雨(はくう)」とは夕立、にわか雨の事で、上半分が明るく描かれているのに対して、下半分は雨雲を表現しているのか、暗く描かれています。画面右下、富士山の山肌に走る赤い稲妻が印象的ですね。絵の上部にベロ藍を一筋引いて空を表現しているところも北斎らしい作品です。
 
 
イメージ 3
 
 
『弘法大師修法図』 1844-47年頃

葛飾北斎作
 
 
 北斎の遺存作品としては最大級のもので、晩年の傑作とされている一枚。東京にある「西新井大師」の寺宝です。弘法大師と真言宗の開祖・空海が疫神を調伏(ちょうぶく:法力を以て怨敵・魔障をねじふせる事)する様子が描かれています。
 
 展示作品の中でとりわけ大きかったという事もありますが、とにかくすごい迫力でした。幾何学模様のような鬼の髪の表現も面白かったです。80歳を越えてこんな絵が描けるなんて本当に驚きです。改めて葛飾北斎は物凄い画家だったのだなと思いました。
 
 
イメージ 4
 
 
『猫の当て字 かつを』 1841-43年

歌川国芳作
 
 
 思わずクスッと笑ってしまうような歌川国芳のユーモラスな作品。猫をうまく配置して文字を作り出す「はめ絵」の一種です。国芳は無類の猫好きという事でも有名で、「猫の当て字」はこの「かつを」に加えて「なまづ」、「たこ」、「ふぐ」、「うなぎ」の5枚が確認されています。
 
 歌川国芳は江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人であり、奇想天外なアイディアが大きな魅力です。雀を人間の姿に置き換えて描いた『里すずめねぐらの借宿』も見ていて楽しくなる一枚でした。一口に浮世絵と言っても本当にバラエティ豊かで面白いです。
 

後編へつづく