
この国に来てから二年が経った。期待と不安、今までとは全く違う世界で生きてみたくて、誰も知る人がいないこの街に来た。ノスタルジックになることは、ほとんどなかった。目に映る全てが違っていた。肌に触れる空気も違っていた。始めは憧れの気持ちだけだったけれど、今は本当にここが好きになった。時々、私は異邦人なのだと感じることはあったけれど、それでも街は私を拒否することはなく、変わらずそこにあり続けた。
少しずつ知っている顔が増え、言葉も体に馴染んできた。自分の順応性に驚いた。それまでの私だったら、進んで回りのものを受け入れようとはしなかっただろう。自分に心地よい環境を作り、日々の生活を大切にする。遠い未来のことなど心配せずに、一日一日を、ゆっくり味わうように暮らしてみる。そんな生き方を自分ができるようになるとは思わなかった。私はいつも、起こるかもしれないという不安を胸に抱き続け、自分が今、決して不幸ではないということを、忘れてしまっていた。
私は一人、異国の街で生きている。友人はいるが、家族や恋人はいない。生まれた街を出た時、彼らのことは忘れることにした。私はただ、自分一人きりの人生を生きてみたくて、ここに来た。誰かの人生と自分の人生の見分けがつかなくなってしまうことが恐ろしかった。切ることのできない絆が疎ましいとさえ思った。利己的だと言われても仕方がない。この二年間、きっと私は、大切な人たちを裏切り続けてきたのだろう。私の生まれた街に、私の居場所はまだあるのだろうか。
この路はどこに続いていくのだろう。ふと、そんなことを思う。