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 風邪がようやく治りかけてきた。

 一日中、部屋の中から窓の外を眺めていた。

 まだ少し咳が出る。

 木々が揺れ、唸るような音が聞こえる。

 風が強く吹いているのがわかる。

 時間が間延びしている。

 こんなに明るいのに。

 こんなにいい天気なのに。

 私の時間は昨日と何も変わらない。

 今日が土曜日だったなんて、さっきまで気がつかなかった。

 何もない現実と、何もかもがある現実。

 いったいどっちが幸せなのだろう?

 気がつくと空が赤く染まりだして、

 私は慌ててベランダに飛び出した。

 手にはカメラがあった。

 液晶画面に閉じ込めた空は、

 現実よりも不鮮明だった。

 結局、私が映し出せるのは曖昧で不確かなものだけだ。

 何がよくて何がいけないのかも

 それさえも、わからないのだから。

 一瞬で赤い空は消え、闇が降りた。

 変わり続けることに、私はついていけない。

 少し眩暈がした。

 風邪はまだ治っていないらしい。

 涙が出た。

 どうかしている。