はじめまして、千葉県旭中央病院から参りました

研修医2年目の馬 敏宰(ま みんじぇ)と申します。

 

 

実はぼくは韓国人で、5歳から来日していて日本語もペラペラです。

そんなぼくなので差別だけはしないでください……デレデレ

 

 

 

 

ぼくは旭中央病院からの3人目の刺客で6月から1ヶ月間お世話になっています。

6月の奄美はひと月に40回雨が降るという前情報で奄美に乗り込みましたがやっぱり雨、雨、雨。

雨が降るとはわかっていましたが自分の時は雨は降らないんじゃないかと、ある種の期待を抱いてしまう人間のエゴに気付かされます。

 

 

 

 

また、上陸翌日に食べた鳥刺しで数日間続く腹痛と下痢に悩まされた末カンピロバクター陽性になるというハプニングもーーー!!

まぁ二つの意味で美味しかったのでいいんですけど笑

 

 

 

 

 

 

 

お腹を壊しつつも、ミヤBMの力を借りて島の医療にも触れることができましたニヤニヤ

 

急性期医療を担う旭中央病院と比べて、

患者層が高齢でありリハビリや経過観察目的の入院の患者さんがいること、

場所、地域、患者層などの違いで病院の役割も大きく異なる事に気付かされました。

また、病棟管理や救外対応についても異なる部分が多々あり、

自分の病院以外の病院を知る事は視野を広げる上で良いことだと実感しました。

 

 

 

 

 

 

続く雨には参りましたが、ぼくは全力で奄美を満喫しました。

ぼくの奄美での余暇を一言で表すと“青春”

 

 

 

 

 

毎日美味しいもの食べて、

 

 

暇を見つけては

シュノーケリングに出かけて、

ナイトツアーに行って、

ハブを捕りに行って…etc

研修医同士で時間を共にしている内にあっという間に時間が過ぎていきました。

 

 

 

 

こんな島の生活がいつまでも続けばいいなぁと思いましたが、楽しい時間はあっという間にすぐに過ぎ去っていくもので、残るはあと3日。でも、少し短いくらいがちょうどいいと、自分に言い聞かせながら寂しさを振り払っています。

 

そう、もう夢から目を覚ます時間です。

 

 

 

 

ありがとう奄美、さようなら奄美。

 

 

 

 

 

 

ということで

ここからは島の医療で特に気になったことです。

 

病棟から熱発コールあり採血を施行したところ以下の様な結果になりました。

 

 

胆管炎にしては肝酵素の上昇は弱いし何だろうと思いました。

発熱以外はバイタル安定していましたが血液培養を採取しましたが数時間以内に大腸菌が生えたため抗生剤治療を開始しました。

肝酵素上昇についてはその後自然軽快し結局原因は明らかではないけれども非特異的な肝酵素上昇としてショック肝などをみていた様な感じでした。

 

このデータをみてどうアセスメントすればよかったのか肝胆道系酵素について調べてみました。

 

 

肝胆道系酵素について

 

ここでみていきたい酵素は

○肝逸脱酵素(AST・ALT・LDH)

○胆道系酵素(ALP・γGTP)

ついてです

 

まずは、

○肝逸脱酵素(AST・ALT・LDH)の見方についてです。見方のポイントとしては

1、トランスアミナーゼ上昇の程度

2、AST/ALT比

3、トランスアミナーゼとLDH、CPKの比較

 

1ついてですが、以下に表で示します。

閉塞性黄疸やアルコール性肝炎では、

トランスアミナーゼが500IU/Lを超えることは少ないこと。

トランスアミナーゼ1000IU/Lを越える時=Hypoxic hepatitis(ショック肝)、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎を鑑別にあげる必要があるというのがわかります。

 

 

 

次に2のAST/ALT比についてですが

基本的に肝細胞内にはAST/ALTの比は1.5−2と保たれており、肝障害においても同様の比率で上昇します。そのため、ASTがALTの2−3倍以上の上昇であればアルコール性肝炎や肝細胞障害以外の要素によるAST上昇(心筋、骨格筋、血球破壊)も考慮します。

 

 

 

ALTは分布が肝臓メインですので肝疾患に特異度の高いマーカーとなりますが、AST優位の場合はでLDHと比率で肝疾患かどうか判断の必要があります。

 

 

 

LDHとASTの比較について比較について、LDH優位の時はショック肝を疑います。

簡単な目安で言うとLDH/AST比が肝炎なら5未満、20以上で血液疾患か悪性腫瘍を想起すべきです。骨格筋崩壊によるトランスアミナーゼ上昇ではCPK>LDH>AST, ALTになります。

 

 

また、半減期ALTがASTの3倍長いため慢性肝疾患(慢性肝炎、脂肪肝)やピークアウト時の急性肝障害ではALT優位となります。そのため、肝胆道系疾患の改善の指標としてはASTが用いやすいです。

 

 

次に胆道系酵素(ALP・γGTP)についてです。

これらの酵素はパターン訳で考えることは難しく、予想できる疾患は参考程度に留めます。

・ALPとγGTPどちらも高値で肝疾患を考える、ALPのみであれば骨疾患を第一に考える

・ALP正常高値の3倍以上で胆道系閉塞、肝占拠性病変、薬剤を考える

・γGTPの単独上昇ではアルコールの影響を考慮する(アルコール摂取でγGTPの半減期は延長する)それ以外には、抗てんかん薬、抗精神病薬、ステロイドでも誘発される。

 

 

トランスアミナーゼ<500IU/LでALP>正常上限の3倍=胆道閉塞

トランスアミナーゼ>500IU/LでALP<正常上限の3倍=肝細胞障害

 

※胆道閉塞では胆道系酵素(ALP・γGTP)はトランスアミナーゼ(AST・ALT)より遅れて上昇するため1回の採血で胆道閉塞なしとは言えない

 

以上をまとめると、

 

1、トランスアミナーゼ上昇の程度

・100未満は特異的な肝疾患は疑いづらい、甲状腺疾患や副腎不全でも上昇

・100〜500では閉塞性黄疸やアルコール性肝炎を疑う

・1000を越える時=Hypoxic hepatitis(ショック肝)、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎を鑑別にあげる

 

 

2、AST/ALT比

・AST/ALT<2で肝細胞障害

・AST/ALT>2で他のASTが上がりうる疾患を想起する(心筋、骨格筋、血球破壊)

 

3、トランスアミナーゼとLDH、CPKの比較

・ALTの上昇は肝疾患への特異度が高い

・トランスアミナーゼ上昇+LDH優位の時はショック肝を疑う

・LDH/AST比が肝炎なら5未満、20以上で血液疾患か悪性腫瘍

・骨格筋崩壊ではCPK>LDH>AST, ALT

 

4、胆道系酵素(ALP、γGTP)の評価

・参考程度だが、ALPとγGTPどちらも高値で肝疾患を考える

・ALP正常高値の3倍以上で胆道系閉塞、肝占拠性病変、薬剤を考える

・γGTPの単独上昇ではアルコールの影響

 

 

 

上記を踏まえて検査データを読み解くと

 

トランスアミナーゼは100未満であり特別な肝疾患ではなく副腎不全などでも起こりうる
ALPは正常高値の3倍以上の上昇ではなく、γ-GTPの上昇も軽度であることから、ショック肝と言うよりは菌血症による非特異的な肝酵素の上昇を疑います。

 

いかがでしたか、日頃よくみていた肝酵素上昇ですが系統立ててみていくと結構面白いことがわかりました。

 

それでは1ヶ月間お世話になりました。また、ふらっと遊びに来たいと思います。

その時はよろしくお願いします。

 

来週は浅野先生よろしくお願いします〜

 

 

参考文献
高岸勝繁:内科診療フローチャート(2017)

酒見英太:ジェネラリストのための内科診断リファレンス(2017)