わたしもヒルマも、何もしゃべりませんでした。
「いこう」ぽつりとヒルマが言いました。
ゆっくり歩きだしました。
以前は手をつなぐのも拒否だったのに。
こうして並んで歩けることを、わたしはもっと喜ぶべきなのかもしれません。
台風一過。
空は雲ひとつない青空。
なのにわたしの気持ちはぐるぐる渦巻いています。
「ぐちでもなんでも言ってくださいね」
やさしく声をかけてくれた人に、本当は聞きたかったのです。
どうしてうちの子なんですか?
どうしてわたしなんですか?
ヒルマの発達障がいは目には見えなくて、わたしもつい忘れてしまう。
ヒルマがわがままで、根性の曲がった子どものように思えてしまう。
時々とってもイヤになってしまう。
手におえないと思う。
どうしてうちの子なんですか?
どうしてわたしなんですか?
そんな思いが小骨になって、のどにつかえて話せない。
しずかな登園。