彼からの電話は私を硬直させた。
 
「元気?」
 
そういわれ私は
 
「どうだろう?」
 
と答えた。
 
困らせたいわけでも、考えさせたいわけでもない。

 

本当にいつもの風情で。
 
耳元の電話越しに聞こえてくる声はなにやら申し訳なさそうに言っている。
 
私が彼と出会ったのは一九になる年だった。
 
就職し初めての上京したときに住んだアパートの住人。
 
まだ、右も左もわからないような小娘の私に

 

あの人はとても親切だったのを覚えている。
 
それから、五年。
 
生活って永遠に続かないのだと私は実感した。
 
五年の間に私は職を変え
 

見合と言う言葉が頻繁に親から聞こえてくる年になった。

 

祖母の言うように

 
アパートを引き払い実家に帰れば

 

また、ぬるま湯の生活がはじまるのだろう。

 

それはそれで、何とかなるのかもしれない。
 

幸せな生き方の一つだ。

 
でも、私は家族と離れ生きることを選んだ。
 
二度と、戻ることはないだろう。
 
ふと、玄関先にいる、丸まった三毛猫のチロの姿が目に入った。
 

大きな欠伸をする彼女を眺め

 
人間ってなんて難しくできているんだろう。
 

なんて思ってしまう。

 
今日私はまた、一人の人に別れを告げられる。
 

この電話の主がそう。

 
ずっと知っていた。
 
だけど、どうしようもなかった。
 
私が素直にはいと言わなければあの人も困るのを知っている。
 
相手の心を縛ることなんて誰にもできないでしょ?
 
そんな大人じみた言い訳が私の頭で渦巻いてゆく。
 
でも、本当は行きたくない。
 
どうすればいいのかわからない。
 
でも、きっと私は「はい」と言う。
 

そして、今までありがとうと、きっぱりと言い去るのだ。

 
どうして心の結果と、違う選択を選ぶのだろう。
 
人間って不思議だ。
 
もしも私が猫だったのなら、

 
「煮干がおいしいにゃ~」
 

なんて言って毎日を平和に暮らせるのに。
 

泣きそうだ。

 
「・・・聞こえてる?もしも~し?」
 
彼と、話中だった。
 
「水木さんいい加減お願いしますよ。家賃。」

 

 

 

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*物語はフィクションです。*

 

こんなオチですんませ~ん:゙;`;:゙;`;・o(ロ≦〃) 

 
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