ある日、私の元に一通の手紙が届いた。

 

「今度、そちらの地方で娘が主演を演じる舞台が公演されます。よろしかったらどうぞ。」

 

と書かれた手紙にチケットが2枚添えてあった。

彼女はかつて私が上京していた大学時代の知り合いで

もう会わなくなってから27年は経つだろう。

 

彼女は大学を出た年にすぐ結婚し子どもを授かった。

その娘が主演を演じていると言うわけだ。


「月日がたつのは早いな・・・。」

 

リビングで新聞を片手にそう呟きながらチケットを眺めた。

おそらくここに写っている女性がそうなのだろう。

どこか、彼女の面影を継いでいる。

 

「父さん、ぼんやり何見てるの?」

 

19になる息子が声をかけてきた。

 

「ん?あぁ、古い知人からの手紙だよ。演劇に興味あったらどうぞってね。」

 

「へ~?監督か何か?」

 

「まぁね。この日、父さん仕事なんだ。せっかくもらったものだしどうだ?お前行ってくるか?」

 

「え?これ、普通だったら6000円もするの?もったいないし行こうかな・・・。」

 

「ほら。」

 

私は、彼にチケットを手渡した。

 

それから、数日後。

 

「舞台どうだった?」

 

私が息子に尋ねたら息子はこんなことを言っていた。

 

「隣の席のおばさんがね、偶然にも主演女優のお母さんだったんだよ。それでね。ずいぶんとうれしそうに語るんだ。「今年27でやっと主演になった」とかなんとか。よっぽど娘の主演がうれしんだね。一緒に控室来る?なんて言ってたけど一緒にいた友達も女優さん知らないし失礼だから断って来た。」

 

「そうか。他には?」

 

「他?ほかって?」

 

そう言って彼はそれ以上、私に追及しなかった。

鈍いのか、それとも彼なりの配慮なのか。それは分らない。

 

「えっと、主演の人がきれいだとか、演技だとかは?」

 

「多分、きれいなんだと思う。」

 

「多分?」

 

「うん。遠くてね顔まではよく見えなかったんだ。会館の真ん中の方の席だったから。

隣のおばさんが年の割には小奇麗だったから多分27の女優さんもきれいなんじゃない?」

 

「そう。」

 

「舞台よかったよ。」

 

「そうか。」

 

もしも、私の息子があなたの娘と

どこかで知り合えていたら、チケットはどう作用したのだろう。

そう思いながら私は熱いお茶をすすった。




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団塊の世代に送る物語・・・。ですかね?


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