健一郎は昔からひとつ気になっていたことがあった。

 

「どうしたら、眠る瞬間を体感できるんだろう?」

 

彼はな手いる間、意識がないことが不思議で仕方なかったのだ。

夏休みの研究は、そんな動機からはじまった。

 

まず彼がしているのは、目覚まし時計を夜中にセットしている。

その時刻は彼がいつも眠る時間だ。

 

「健一郎、あなた何してるの?」

 

夏休みの研究課題に興味津々の母親は健一郎に聞く。

そんな母に健一郎はまじめな顔をして答えた。

 

「あのね、お母さん。僕は夢の狭間を見て見たいんだ。」

 

母の顔はどうもピンときていないようで

「あっそう?」と言う。

彼は小学4年生になる。

みんなこうなのかしらというような顔が不安を抱えてしまったように見えなくもない。

 

「夢の狭間って?」

 

健一郎は答える。

 

「寝るときって意識ないでしょ。意識があるところのぎりぎりの体験をしたいんだ!」

 

そう答えた健一郎に母はばっさり

 

「そんなことしてどうするの?」

 

「でも、他に夏休みの自由研究の宿題を思いつかなかったんだ。」

 

母は、健一郎の顔をじっと見てただ一言。

「そう。」

とだけ健一郎に返した。

 

それから健一郎の睡魔との戦いが始まった。

 

「起きてるぞ。起きてるぞ。」

 

そうやって気合を入れつつも、いつの間にか寝てしまう彼。

気がつけば、部屋の電気は消され、り夜は朝へと姿を変えている。

用意しておいた目覚ましもきちんと解除されている。

 

「もう!お母さん。何でこんなことするのさ!」

 

こんなことするのは母しかいない。

健一郎は自分が寝ていた事も忘れ、研究を邪魔された事に腹を立てた。

 

「おかげで寝ちゃったじゃないか!」

 

すると母は、

 

「もう!あなた体壊すわよ。こんな事やめて夏休みの工作でも買ってきましょう?」

 

心配する母をよそに健一郎の研究魂は動かなかった。

 

「今日は邪魔しないでね!」

 

顔を赤らめかなりご立腹だ。

 

「本当に、それでいいの?寝ている間を体験したい・・・って」

 

「いいんだ!僕の決意は固い!」

 

いくら言っても無茶をやめない健一郎に母はひとつだけ条件を出した。

 

「目覚ましのセットはやめなさい。」

 

 

その日の夜は、健一郎は夜遅くまで起きている事ができた。 

眠いんだけど、目が閉じない。

ぼんやりと、天井を眺め、眠りの瞬間を待っていた。

 

「頭がくらくらする。なんだか目がかすむぞ。」

 

すると、どういうわけだろうか健一郎の周りは闇で覆われ始めた。

体の置くまで闇が覆って来る。

 

耳も聞こえない。

 

声も出ない。

 

体を動かしていても見えない。

 

ここにあるはずの手が闇で隠れて見えない。

高まる不安。

ひとり闇へと放り込まれる。

 

「もしかして、今寝ているの?」

 

それは、眠りへの入り口だと健一郎は確信した。

 

「眠るってこんなに怖いものなの?闇が闇が周りを・・・。もしかしたら、寝たら死ぬかもしれないぞ」

 

起きて起きていなきゃ。健一郎は心の声で大きく叫んだ。

 

 

『ブチン』

 

 

何か大きな音が頭の中で聞こえた。

健一郎が目を開けると、そこは彼のベットの上。

 

「夢?」

 

健一郎がほっとした時、左手が何かにぶつかった。

 

「何これ?太いコード?」

手を伸ばすとそれは自分の頭にまで繋がっている。

 

「え?」

 

扉が開いた。

 

「お母さん。これどう言うこと?」

 

「とうとう見てしまったのね。よく見て御覧なさい。」

 

そういうと鏡を見せた。

彼の頭には巨大なコンセントが突き刺さっていた。

 

「今、充電中よ。」