昔々あるところに、しがいない売れない芸人がひとりおったそうじゃ。

彼の芸は誰にも真似できない裸踊り。

練習すれば誰でもできそうじゃったが彼も芸人。

誰にも真似する事ができなんだ。

 

ある時、こやつを売れさせようとこれまた貧相な劇団長がやってきてこう言った。

 

「オイ芸人。ぜひともうちに来てくれんか?ウチには稽古場もあるし、沢山の技術者もいる。」

 

熱心に団長に誘われた芸人は劇団に努める事にした。

監督兼管理者ひとり。舞台掃除ひとり。舞台技術者ふたり。広報4人。総合司会ひとり。芸人ひとり。

総勢10人の小さな小さな劇場じゃ。客はそんなにおらんかった。

 

この売れない芸人が入ったおかげで劇団は少しだけ大きくなった。

売れなかった芸人も劇団員の助けで稼げるようになり喜び、騒いでおった。

 

芸人が稼いだお金はきっちり10等分。

じゃが、ある時から芸人は不満に思っておった。

 

「俺が稼いだお金なのに。俺のおかげなのに。」

 

団長は芸人に言うた。

 

「あなたと一緒に何人働いていますか?」

 

芸人の芸は芸人のものだけど

舞台はみんなで作っているんだ。

団長の言い分はもっともな話じゃ。

 

すると芸人はこう返した。

 

「お前らは芸人が売れようが売れまいがきっちり10等分だよな。している仕事は変わらないのに俺の担当の時だけ沢山給料をもらえるんだぞ?おかしくないか?」

 

「そう思いますか?」

 

「俺はお前らがいなくても売れることができたんだよ。」