広い広い公園の真ん中に桜の木が一本。
淡い風は、まるで粉雪のように花を散らせ甘い香りを運ぶ。
「ここは、近所の公園・・・?」
そうつぶやきながら、葵は目覚めた。
「あの場所には桜なんて生えてないのに・・・」
見上げるほどの大きな木。
夢にあった大きな木があった場所は葵が小学生だった頃よく通った桜の木に囲まれた小さな公園。
家から徒歩10分もかからない場所だと言うのに、なかなか訪れる機会はなく
今、どうなっているのかよく知らない。
「仕事の帰りにでも、立ち寄ってみようかしら?」
ちょっとだけ今その公園がどうなっているのか気になった。
「あ、遅刻する!!」
葵は急いで飛び出し、部屋を後にした。
その帰り道。彼女は朝見た夢のことなんてすっかり忘れていて、
クタクタになり車を走らせながらの帰宅。残業は夜中まで続き、彼女は疲れきっていた。
その上・・・
「また、工事中?」
夜も遅くなると、昼間工事できない鬱憤を晴らすかのように夜は通行止めが多い。
何度も回り道をしなければならなくイライラも重なる。
「あれ、そういえば・・・」
たまたま、回り道、回り道で誘導されて行き着いた場所はあの公園の近く。
今朝の夢のことを思い出した彼女はせっかくの機会だからと、車を止めあの公園のそばへと寄った。
公園はもう十数年経つというのに変わりばえはなく、
あえて言うなら、遊具がひとつ撤去されていた。
残念ながら秋口で、枯れきった桜の木を眺める事はできるものの花を見ることはできない。
入り口の壁は割れていて、幼い頃はよく石を詰めたりして遊んだものだが、今見ると
活気がなく、放置された年寄りのようだ。
「こんなに、狭かったかしら・・・。」
遊具がひとつへって広くなっているはずなのに
公園で幼い頃感じた開放感はない。
それどころか堅苦しい上、夜風が冷たく背筋が冷える。
夢で見た公園の真ん中へと彼女は進もうとすると、
看板が立てかけてあった。
『工事中回り道』
冷たく横たわる看板はモノを言わない人が描かれていてなんだか寂しい。
彼女は夢で見た公園の真ん中へと進んだ。
足取りは昔ほど軽快ではない。
久しぶりに会った同級生が他人に感じるのと同じで、遠慮がちな歩き方。
真ん中は何もない、ただのグランドの土があるばかり。
彼女はしゃがみこみぼんやりと公園を一周眺め空を見た。
目が夜になじんでくると公園の雰囲気が懐かしいものに変わってゆく
夜風がそよそよと、ふいていてなんだか気持ちが良い。
ふと、足元を見ると桜の花びらが一枚転がっていた。