あるところに美佐子という名前のしがいない独身OL(27)がいました。ちなみに彼氏はいません。ずっといません。
そんなことはさておき、美佐子には最近、人には言えない秘密があったのです。
オフィスワークをしているとお尻が痛むのです。
「痛い、痛いわ」
あまりにも我慢できなくなった彼女は家に帰り、
部屋ですぐさま確認してみることにしたのです。
お尻を触った彼女は愕然としました。
「い、イボ痔」
どう
扱ってもすんごいのがあるのです。
「困ったわ。本当に困った」
そうなのです。
女性が、痔で病院に行くのはたいそう恥ずかしいのです。
この苦しみは、なったものにしかわかりません。
「友達を誘うわけにも行かないしなぁ・・・」
それから数日
奇跡の万能薬オロ○インに頼り、様子を見ることにしたのですが
何日たっても治る気配がありません。
休日も痛いのを我慢して家に閉じこもり
彼女は自分の好きな雑誌を見ていたのです。
すると普段なら目に留まらない冊子の広告欄に
痔について書いてあるではありませんか。
釘付けです。釘付け。
「どうしましょう・・・。」
彼女は思いました。この病院に行きたい・・・と。
するとおちなりの通販コーナーに
薬まであるではないですか。
売り文句はこうです。
『
どんな痛みもどんな症状も一発で治る塗り薬!
私たちは世界からあらゆる病気を消滅させるために戦っています!
協力したい方はぜひ!
通販出しか手にできないこの一品。
お届けの際、
「あなたの素性は誰にも知られません。」
by 万能薬局会
』
と。
「こんなので私の痔は治るのかしら?」
物は試し
早速、注文してみる事にしたのです。
一日も経たないうちに
荷物が届きました。
『正義バンバン会社さんからのお届け物ですサインください』
「正義バンバン会社?聞き覚えがないけど、どこの会社?」
美佐子は不思議に思い、
箱の蓋を開けると
大きな字で注意事項をよく読むように・・・と書いてあるのです。
『この塗り薬は魔法の薬です。商品に書いてある
注意事項をよく読んでから、当人の責任の元お使いください』
と。
「確かに、私が周囲にイボ痔だとばれることはないわ。けど、会社のネーミングセンスはひどすぎよ。」
注意書きはこう書かれていました。
『この薬は魔法の薬です。
以下の注意事項をよく守ってお使いください。
・まず最初にあなたが最近よく会う人の中で
病気をうつしたい人と思っている人のことを思い浮かべ、声に出して名前を言ってください。
・その後、10分以内に適度な量を患部に塗ってください。
・もしも、思い浮かべないと、薬は効果を現しません。
・症状は少なくても一週間にはうつることでしょう。
・2度塗り、3度塗りしても効果はありませんのでご了承ください』
「誰かにうつすって・・・。おまじないみたいなものかしらねぇ?」
美佐子は考えながら続きを読みます。
『・その後一週間以内に、『よく顔を見ているどなたか』にこの薬を渡してください
・もし、渡さないとあなたの病気は2倍になって返ってきますのでご注意を
』
と。
「2倍・・・。イボ痔2倍って切痔も入るのかしら・・・?けど、どんな症状も治るってすごいわね」
「あっ・・・痛い!!もう我慢できないわ。」
美佐子はとりあえず塗りはじめることにした。
「うつすの誰がいいかしら?やっぱり最近、
私に『美佐子くんは昔は美人だったね』という課長がいいかしら?
ううん、最近若いからってはしゃいでいる新入社員の水木がいいかしらね?
でも、あの2人に何かすると後が怖いわね。
そうねぇ・・・、あっ、あの目立たない普通社員、平松君なら別にいいわよね?なんか、普通だし。関係が壊れてもいいもの。」
「平松~」
と叫びながら美佐子は薬を塗ります。
なんと言うことでしょう。
瞬く間に痛みがひいていったのです。
「あぁ、御尻の痛くない生活を取り戻したわ!!この薬はホンモノだわ!」
美佐子は有頂天です。
「そういえば薬はどうやって渡そうかしら・・・?急に、あげるのも変だし」
次の日、会社に行った。
平松君は、おしりを抱えながら困っています。
「あぁ、本当だわ。でも、まぁイボ痔ぐらいなら我慢できるわよねぇ?」
そんなことはお構い無しに
美佐子は誰かに薬を渡す事を考えながら自分の仕事を始めます。
すると、隣の席の山田さんが目に入ってきました。
「あら、山田さん?どうしたのその指?」
「先輩、実は先日彼のために料理していたのですが指を切ってしまい・・・」
美佐子はにやりと笑い、薬を差し出しました。
「山田さん、昨日、コレ、知り合いからもらったんだけどすごい効き目の薬があるのよ。良かったら使ってみて」
それから数ヶ月、美佐子は
あちらこちらあの薬が飛んでいるのを確認していました。
我関せずという顔で。
ある時は山田さんのの指を治し、
ある時は係長のぎっくり腰を治し、
ガンで入院中の部長まで復活していました。
時間が経つごとに
だんだんうつした人と、渡された人が『同じ人』になって行ったのです。
「そうよねぇ、重い病気をあげているんですものねぇ」
美佐子はなんとなく納得してしまいました
すると、異変に気がついたのです。
「・・・あっ・・・私、お尻りがまた痛むわ。」
すぐさまトイレへと駆け込み確認しました。
「・・・やっぱり。それになんだか熱っぽいし、腰も痛くなってきたし。めまいもする」
「まさか・・・誰か私にうつしたのね?誰?誰が持っているの?」
美佐子は必死になって探しました。
「み、水木・・・?あなたそれ・・・。」
そこには全身薬でまみれた女がたっていたのです。
「先輩・・・。ごめんなさい」
「水木、そんなことより薬は?薬!」
水木はあの薬の箱を差し出しました。
「空じゃない!空よ!どうするの?社内中の病気が私の元にあるのよ?」
そう言われ、水木は泣き出す始末。
「ごめんなさ~い」
薬局会社に問い合わせしてみるわ!
「もしもし!」
「もしもし、こちら皆様の正義の味方万能薬局会でございます。」
「あの、あの薬切れてしまって、また欲しいのですけど・・・」
「申し訳ございません。只今、在庫切れでして。それに、2度目以降は効果がないと記載してあったはずですが?」
「どうしてくれるのよ!」
「お客様?私たちのモットーをよく読まれましたか?広告にも書かれていたはずですよ?
『私たちは世界からあらゆる病気を消滅させるために戦っています!
協力したい方はぜひ!』と。
どういう意味だかお解かりですよねぇ?」