ボスの事件が起きて半年くらい経った頃だろうか、

既に日課となっていた六羽の鶏の散歩!?を眺めながら、

僕は縁側に座ってぼーっとしていた。

 

「僕にはライブやツアーがあるし、時々は葉山にも戻る。

毎日の散歩の見張りと世話は正直言って負担だな。

見張っていないと野生化した野良猫や鳶に襲われかねないし・・・」

 

「誰か、貰って飼ってくれないかな・・・」

 

そう思った時だった。

道の向こうで工事をしていた人が

スタスタと僕の方に近づいてきて言った。

 

「旦那、あの鶏、東天紅だよね。

俺、ガキの頃から鶏が好きで東天紅も飼ってたことがあるんだよ。

俺に卵を分けてくれないかな」

 

有精卵だから当然、孵化して雛になる。

 

まさに渡りに船!

 

僕は言った

「もちろん卵はあげますけど、よかったら六羽ともあげますよ」

「ホントに!」 

彼は喜んだ。

 

「じゃあ準備ができたら取りに来ていいかな」

「どうぞ」

 

彼が六羽の鶏たちを取りに来たのはそれから約一ヶ月後だったが、

彼と僕が話をしたその翌日から

三羽のメスたちは卵を全く産まなくなった。

彼らが貰われていくまでの間、ひとつの卵も産まなかった。

それまで毎日欠かさず産んでいたのに。

 

その日から彼らの僕に対する態度が

なんとなくよそよそしくなったと僕は感じた。

 

約一ヶ月したある晩にその鶏好きの彼は

懐中電灯と袋を持って鳥小屋に入り、

暗がりの中で六羽を丁寧に布に包んで持ち帰って行った。

 

動画”ヒロシとチュン”はこちら

https://youtu.be/9uOaCsnmt6o