この映画を見ようと思ったのは

 

*最近シリアスな映画が続いたので

思いっきり笑えるような作品が見たかった

 

*この予告だけでかなり面白かった

から。

 

結果、予想どおり楽しく大笑いできて

スカッとしたし、

60過ぎた今だから共感できることが多々あり

いろいろな意味で面白かった。

 

 

手土産バトル

「編集者殺すに刃物はいらぬ

『古い』と一言言えばよい」

(特に雑誌コンテンツでは)いわれているけど

 

唐沢寿明演じる、昭和型編集者の

アップデートできてなさを象徴してたのが

佐藤愛子への手土産チョイス。

 

虎屋、うさぎ屋、八天堂

そりゃおいしいし老舗でまちがいないけど

有名で今さら珍しくもない、

ど定番ばかり。

 

新しいものへのアンテナの低さ、

「ばあさんだから和菓子を喜ぶだろう」

という頭の固さがにじみ出ている。

 

 

これと対照的なのが、

雑誌に見切りをつけてWEBメディアに転職する

若手編集者のチョイスの秀逸さ。

 

・マニアック

・珍しい

・パッケージのビジュアルが華やかでかわいい

(↑ここ大事)

・入手困難

なサブレで、そりゃ愛子先生も喜ぶし

連載を受けちゃうわ…

なんなら私も、あれ食べてみたいわ

 

 

90歳の凄さ

 

しかしなんといってもすごいのは

映画の大画面でのアップにも耐える

草笛光子さんの美しさ…。

 

あと、映画の中のファッションも

年齢相応の落ち着きがありつつ

この年でないと出せないエレガントさがあって

すごく参考になった。

 

年をとるとどうしても肌の色がくすむけど

だからこそ年をとるほど、

服のきれいな色が映えるんだな

と思ったり、

 

年をとることは細胞が古くなることであり

ゆえにほっておくとどんどん

汚らしくなっていいくのはしょうがない。

だからこそ

清潔感=高級感=素材感

なんだなと改めて思ったり。

 

そして映画の最後に、

リアル愛子先生の幼少時から現在までの

ポートレイトが流れたが

若い頃の美しさ、愛らしさときたら

女優も顔負け。

 

最後の叙勲のインタビューのリアル映像。

草笛さんも美しかったけどリアル愛子先生の、内面からの輝きも負けていない。

ハチのこと

エッセイの中に出て来た

愛子先生の愛犬・ハチのエピソード。

読んだことあるぞ、

と思い出した。

原作のエッセイ本が話題になった時に、

義母に送ったことがあり

その時に読んだのだった。

 

ハチのところは、読んだ時に

気がつくと涙がぽろぽろこぼれていたけど

 

映像で見せられると本当に、泣けて困った

(犬の愛情の純粋さに心を打たれる、

温かい涙ではあるけれど)

 

ダンナはもちろん、隣でえぐえぐ

泣いていた。

 

著作のこと

映画の最初のほうで、

愛子先生の過去の著作一覧が出てきて思い出した。

 

その昔、「血脈」を読んで、

その面白さにどハマりしたことを。

 

 

「血脈」は佐藤愛子先生の代表作のひとつで、

愛子先生の父で妻子ある佐藤紅緑が、

美しい新進女優を

狂おしく愛してしまうことを発端に

「佐藤家の荒ぶる血」が巻き起こす

因縁の炎が佐藤家を焼き尽くしていく
圧倒的迫力と感動の大河長篇。

 
これが面白くて面白くて

読み始めるともう止まらず

最後のほうになると

「終わらないで欲しい」

と切実に思った記憶がよみがえった。

 

その後、佐藤愛子先生の小説をいくつか読み

大人、というか初老の男女の恋愛小説で描かれた

外からはわからない、疼痛のような痛み

またまたハマった記憶が。

 

そして20代では

娘の響子さん(わたしと同年代)とのやり取りを描いた

「娘と私の◎◎」シリーズを愛読していて

 

佐藤愛子先生が

娘のクールさを「気概のなさ」ととらえ

嘆いていたのを

響子さんの立場になって同情しながら

読んでいたのも思い出した。

 

「いいおじいちゃんになんかならなくていい

面白いおじいちゃんになれ

と愛子先生は言ってたけど

それはそれで難しいのでは

私はこれから、どう生きたら

面白いおばあちゃんになれるのだろうか。

帰り道、考えてしまった。

 

そして、映画館に、

いつもは見かけないシニアの方たちがいっぱいいて

元気になって帰られていく様子も

よかったなあ。