認知症になっても家族信託や損害保険を利用して財産を守る | 司法書士事務所尼崎リーガルオフィスのブログ

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認知症になってしまった人が詐欺被害に遭ったり、他人に迷惑をかけたことで賠償請求されるケースが増えていますね。
こうしたリスクに備えて、信託商品を上手く使うことについて前回お話しました。

 

今回は、家族信託や損害保険についてご紹介します。


家族信託というもの自体があまり一般的に広く知られていないようですが、親子間で契約を交わすことにより、親が子に財産管理を託すことができるしくみになっています。


この契約では、財産管理の方法や範囲を盛り込むことができます。

例えば、親の預金を子供が管理して、生活費や介護費用を支払うなどと決めておけます。
この家族信託では財産が比較的少なく、信託や後見を利用するほどではない人にはメリットがありますが、仕事を任された子供が長い期間確実に財産を管理できるか?が問題ですね。
子供の方もずっと何事もなく元気でいられるかどうかなんて、わからないですしね。

 


また、日常生活で他人にケガをさせるなどで損害賠償責任を負う可能性もありますね。

 

2007年に認知症で徘徊していた男性が、線路に飛び込んだことで死亡した事故がありました。
その事故によりJR東海は家族に損害賠償を求める訴訟を起こし、最終的には家族には監督義務はないとされましたが、認知症に伴ってこのような金銭的なリスクもあると意識されるきっかけになりました。

 

こういった場合に、保険金が下りる個人賠償責任保険を取り扱う損保会社が増えています。
この保険で補償を受けられるのは、契約時に決めた「記名被保険者」とその家族でした。
しかし、上記の電車事故などによって、三井住友海上火災保険などでは、重度の認知症の親がいる別居中の家族も補償に加えられるようになっています

 


ですが、新しく変わった保険に急いで入る必要はなく、これまでの保険でも子供を記名被保険者にしておけば、親が他人にケガなどさせてしまって子供が責任を負ったときに保険金が下りるようになっています
火災保険や自動車保険の特約として加入する場合でも、このようにできないか内容を確認してみてください。

 

ただし、個人賠償責任保険は原則として、ケガや物損がない賠償はカバーできません
2007年の電車の事故のように、認知症の親が線路に入ったことで電車が遅れた場合、車両や施設の損壊がなければ保険金が下りません。


認知症に関連する商品でもすべてのケースについて補償できるわけではないので、それは気を付けないといけませんね。