病院阪の首縊りの家 ~金田一耕助最後の事件~ | チャカチャカりきりきのブログ

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今日は「病院坂の首縊りの家」を観ました。



『病院坂の首縊りの家』 (1979年・日)
チャカチャカりきりきのブログ-病院坂の首縊りの家

スタッフ

監督:市川崑

脚本:日高真也、市川崑

原作:横溝正史「病院阪の首縊りの家」

製作:市川崑、馬場和夫、黒沢英男

音楽:田辺信一

編集:小川信夫、長田千鶴子

キャスト

金田一耕助:石坂浩二

法眼弥生:佐久間良子

法眼由香利/山内小雪:桜田淳子

日夏黙太郎:草刈正雄

妙ちゃん:中井貴恵

五十嵐滋:河原裕昌(現:河原さぶ)

田辺光枝:三条美紀

山内冬子:萩尾みどり

阪東刑事:岡本信人

本條直吉:清水紘治(清水綋治

五十嵐猛蔵:久富惟晴

三之介:小林昭二

佐川哲:原ゆたか

吉沢平次:ピーター

老推理作家:横溝正史

法眼琢也:菊地勇一

山内敏男:あおい輝彦

等々力警部:加藤武

宮坂すみ:白石加代子

五十嵐千鶴:入江たか子

加納巡査:大滝秀治

本條徳兵衛:小沢栄太郎




 市川崑監督作品「病院阪の首縊りの家」。原作は横溝正史の推理小説「病院阪の首縊りの家」。石坂浩二金田一と市川崑のタッグ作品は20世紀ではこれが最後の作品ですね。そして原作の金田一耕助もこれが最後の事件となっています。


 昭和石坂金田一シリーズはすべて制覇しましたがこれが一番、泣けたような気がします。というよりこれが一番私にとっては悲劇的に感じました。


 キャストに清水紘治がいますが本当の漢字は( )内の漢字です。しかしあまりにも面倒くさいので清水紘治と表記させてもらいます。彼は今でも活躍してる悪役俳優ですね。あの人の顔は親父役の小沢栄太郎と共にまるで悪役のために生まれたような顔つきですからね。


 このキャスト陣には表記していませんがやはり草笛光子と三木のり平も出ていました。



【あらすじ】



 金田一耕助は本條写真館の主人たちが怪しい客の結婚写真を撮影した、という相談を受け撮影場所の廃墟の家に入る。その屋敷ではかつて女が一人、首を縊って死んだのである。坂の中間地点にある法眼病院の病院跡屋敷のためにそこは「病院坂の首縊りの家」と呼ばれていた。撮影した部屋には撮影した夫婦の夫の方の生首と風鈴が吊るされていた・・・

























【以下全文ネタバレ注意】

↓四行後にネタバレ文あり





 金田一耕助(石坂浩二)はアメリカへの渡米を控え、久しぶりに知人の老推理作家(横溝正史)の下を訪ねる。金田一がパスポート用の写真を用意していないことを知った作家は写真撮影を本條写真館に頼めばいいと紹介する。


 そこでは経営者の本條徳兵衛(小沢栄太郎)、若主人の本條直吉(清水紘治)と手伝いの日夏黙太郎(草刈正雄)が働いていた。金田一が探偵だと知った徳兵衛は自分が何者かに命を狙われていると話す。どうやら徳兵衛は廃ビルを視察した際に自分の頭上から風鈴がとつぜん降ってきたという。金田一は調査を承諾する。


 一方、本條写真館にある女性が結婚写真の撮影を依頼にくる。後日やってきた結婚する夫婦の夫らしき人物が直吉を迎えにくる。その夫は些細なことですぐ怒る短気な男だった。直吉はカメラを持ってその夫に連れられるままある廃屋に連れて来られる。


 その廃屋は坂の中間地点にある。そしてその廃屋は元々、法眼病院という病院の跡地でその跡地で女が一人、首を縊った過去があることから「病院阪の首縊りの家」と呼ばれていた。


 その廃屋の部屋で、夫婦の間に風鈴が吊るされていた。また妻は先日、撮影依頼をしに来た女性に瓜二つだった。夫は乱暴な態度で直吉にさっさと写真を撮影するように指示する。後にその写真を観た本條徳兵衛はこの女性は法眼病院の娘・法眼由香利(桜田淳子)であると話す。


 後日、再び法眼由香利らしき人物から電話で同じ場所で今度は風鈴をとってほしいと依頼される。金田一もそれに同行。しかし前回、撮影した部屋に入るとそこには撮影した夫婦の夫の生首と誰かの歌が書かれた札、そして風鈴が吊らされていた。


 そこに不審な男を発見。黙太郎はその男を追い詰め、彼を捕まえる。


 事件の捜査主任・等々力警部(加藤武)と阪東刑事(岡本信人)は法眼家とその縁戚、五十嵐家を廃屋に呼ぶ。五十嵐滋(河原裕昌)とその母・田辺光枝(三条美紀)、更に人力車引きの三之介(小林昭二)にひかれた人力車から法眼家の未亡人・法眼弥生(佐久間良子)が連れてこられる。滋は夫婦の結婚写真を見て、妻の方は由香利だと話すが弥生はそれを否定する。やがて由香利も連れて来られ、ひとまず写真に写っているのは由香利ではないという結論になる。


 やがて夫婦の身元が判明する。山内敏男(あおい輝彦)と山内小雪(桜田淳子)だという。二人は血の繋がっていない兄妹だと、証言したのは黙太郎が捕まえた男・吉沢平次(ピーター)だった。吉沢によると二人は同じ米軍進駐を回っていくバンドグループ・パイレーツのメンバーだという。


 一方の金田一はかつてこの屋敷で首を吊った女性の身元を調べる。当時の担当刑事・加納巡査(大滝秀治)に当時のことを聞き出す。被害者は山内冬子(萩尾みどり)。なんと敏男と小雪の母親だった。さらに法眼弥生の夫で既に他界した法眼琢也(菊地勇一)の愛人のひとりだった。


 そして所轄署に小雪からの遺書が届く。その内容は自分が兄・敏男からの深い愛情に迷惑し彼を殺してしまった、自分もあとを追って死ぬ、との内容だった。しかし金田一はその遺書の指紋を等々力に調べさせ、遺書には小雪の指紋が残っていないことを明らかにする。


 数日後、本條徳兵衛が何者かに殺された。金田一は事件の行方ばかり追って肝心の徳兵衛の命を狙う人物の調査を怠っていたことを猛省する。またさらに数日後、吉沢が殺され、その現場に居た滋が犯人だと疑われる。


 金田一は法眼弥生の亡き夫・法眼琢也の歌集を見つける。その歌集は山内兄妹のことが詠われ、また東北のことも詠われていた。繋がりの全く見えない山内敏男の生首風鈴殺人事件、本條徳兵衛殺し、吉沢殺しの三件の原点は東北にある、と東北へ向かう。金田一の助手のような役目を担う黙太郎は、山内冬子について調査。しかしその途中で本條直吉が何者かに重傷を負わされる。


 東北での調査を終えた金田一は帰ってきてから法眼家に警察に捕らわれた滋と入院中の本條直吉以外の関係者を呼び寄せる。


 まだみんなが来ない頃、金田一は弥生と一対一の話をしていた。弥生の過去と法眼家について。


 五十嵐猛蔵(久富惟晴)という男が縁戚で病院一家の法眼家乗っ取りを企て、無理やり弥生の母・千鶴(入江たか子)と結婚。まだ十五歳の義娘・弥生を犯し、その強姦のようすを写真を本條家先代の男に撮影させた。


 さらにその性交により、法眼弥生が生んでしまったのはなんと、冬子だったのだ。冬子は生まれてすぐに追い出され名前は引き取った親がつけたのだった。その後、五十嵐猛蔵は法眼琢也という男を琢也の母・すみ(白石加代子)を東北に追放し、当時思い人がいた弥生に自分が強姦した事を脅迫のネタに嫁がせようとするが千鶴に突き落とされ死亡する。


 しかし生活に困った千鶴のために弥生は法眼琢也に嫁いだのだった。千鶴はそれ以来、法眼家の屋根裏部屋でひっそりと隠居している。


 やがて琢也との間に由香利が生まれる。それからしばらくして法眼家に琢也の愛人だった山内冬子が訪れる。冬子は生まれた頃に持っていた南部風鈴から自分の実母が愛人・琢也の正妻である法眼弥生だということを突き止め、話をしようとするが由香利に「父の愛人と会わせるわけがない。乞食め」と罵られ追い払われる。


 絶望した山内冬子は首を吊って自殺。敏男は法眼家へ冬子が訪れたせいで冬子は自殺した、と思いそれ以来、法眼家への復讐を誓う。


 さらに何年か経ち、経営危機に陥った本條徳兵衛は先代が残した乾板から写真を復元できる、と弥生を脅迫しはじめる。弥生は徳兵衛を風鈴で殺そうとするが失敗する。


 また、同じころに病院坂の町に敏男と小雪のパイレーツがやってくる。敏男は血のつながらない妹・小雪を女として愛し求婚までするが小雪はそれを拒絶する。


 そして敏男は復讐計画を実行。法眼由香利を拉致し一時的な精神崩壊剤を打ち込む。本條写真館を病院坂の首縊りの家に呼び寄せ結婚写真を撮影。敏男は自分を拒絶する小雪の代わりとして由香利に接吻をしたりする。


 小雪と敏男が隠れるように暮らすガレージで、抵抗する由香利を敏男は誤って突き飛ばし由香利は頭を打って死亡する。敏男は絶望し自分の首を切る。息の絶える直前に小雪に「俺の生首を首縊りの家に吊るせ」と遺し息絶える。


 混乱した小雪は唯一、頼れる人物・法眼弥生を呼び出し協力を依頼。弥生は自分の娘・由香利が死んだことを深く悲しむと共に小雪の境遇に自分を重ね合わせ協力。病院坂の首縊りの家に敏男の生首と南部風鈴、そして法眼琢也の歌を吊るした。


 それ以来、弥生の進言により小雪は容姿が瓜二つの法眼由香利になりかわる。山内小雪の犯行に見せかけるために遺書を書き、それを警察に送ったのだ。


 また、脅迫する本條徳兵衛を殺害し、さらに法眼由香利の正体が山内小雪であると見抜き脅迫してきた吉沢も殺害。その罪を吉沢から聞かされ弥生を脅迫してきた五十嵐滋にその罪を着せたのだった。そして徳兵衛の意志を継ぎ脅迫してきた直吉も殺そうとするがこれには失敗した。


 やがてその真実をひそかに聞いていた小雪は弥生に抱きつく。弥生は小雪のこれまでの苦労してきた人生に同情する。そこに一同が現れ、等々力警部も金田一から真相を聞かされる。また事件の重要証拠品・乾板を見せる。しかしその中身だけは見せず「法眼弥生の女を封じ込んだもの」とだけ伝える。


 全員が真相を全て知った後、三之介がやってきて、弥生の母・千鶴が死んだことを伝える。金田一たちは屋根裏部屋に駆け込み、千鶴の死を確認する。


 しかし千鶴の下に集まったメンバーの中に弥生の姿が見えない。等々力と阪東は弥生を捜しに出る。だが阪東が重要証拠品の乾板を回収しなければ、というセリフに等々力は「そんなものあっただろうか」ととぼけて捜しに出かけて行った。


 そして金田一は悲惨な一枚の乾板を地面に落として割るのだった。


 法眼弥生は敏男の胴体と由香利の遺体の始末やそれ以外にも事件に協力してくれた人力車の三之介に感謝していた。「これからの法眼家はどうなるのでしょう」「きっと小雪さんが上手くやってくれるでしょう」。弥生のたっての希望で冬子が命を断った病院坂の首縊りの家の前に到着する。三之介は弥生を人力車から降ろそうとするが、弥生は人力車の中で自ら命を断っていた。三之介は帽子をとり泣き崩れる。それを坂の上から金田一は見下ろし去っていった・・・


 老推理作家の家で。金田一はずっとアメリカに滞在していた。黙太郎は写真館が潰れて何か手伝わせてほしいと老推理作家に頼み込む。ふと法眼家の話題が出て家はどうなるのだろう、と気になる黙太郎に対し作家は「まあ壊れないものはないからね」そう答えるのだった。







 実はこの映画、私的には小林昭二さん演じた三之介がすごくいい味を出してると思うんですよ。昭和石坂金田一シリーズにはすべて出演した小林さんですがこの映画が一番、小林さんがよかったなあと思える感じでした。


 なんたる偶然が重なったストーリイでしょう。だって自分の娘がまさか自分の夫の愛人になるなんてねえ。まあ架空の物語ですけども、それでもその偶然が重なり悲しい惨劇が訪れてしまったんですね。私は言ったと思いますが、この映画が昭和石坂金田一シリーズで一番悲しい映画だと思いました。