不毛地帯 ~抜け毛地帯緊急戦線~ | チャカチャカりきりきのブログ

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サブタイはストーリーには全く関係ありませんのであしからず。



『不毛地帯』 (1976年・日)
チャカチャカりきりきのブログ-不毛地帯

スタッフ

監督:山本薩夫

脚本:山田信夫

製作:佐藤一郎、市川喜一、宮古とく子

原作:山崎豊子「不毛地帯」

音楽:佐藤勝

編集:鍋島淳

キャスト

壱岐正:仲代達也

川又空将補:丹波哲郎

大門一三:山形勲

里井専務:神山繁

壱岐佳子:八千草薫

壱岐直子:秋吉久美子

小出航空機部員:日下武史

芦田二佐:小松方正

田原記者:井川比佐志

警視庁捜査二課長:高橋悦史

原田空幕長:加藤嘉

ブラウン社長:アンドリュー・ヒューズ

山城防衛庁長官:内田朝雄

三島幹事長:杉田俊也

総理大臣:高杉哲平

山田乙三:小山源喜

梅津美治郎:嵯峨善平

久松経済企画庁長官:大滝秀治

貝塚官房長:小沢栄太郎

鮫島辰三:田宮二郎


ナレーター:鈴木瑞穂



 山本薩夫監督作品。原作は山崎豊子の小説「不毛地帯」。これまた難しい作品ですが凄く面白いんですよね。近年、唐沢寿明主演でドラマ化してましたよね!


 そしてまたキャストが豪華!凄く豪華です。今日は外国俳優吹き替えの面から紹介しましょう。まず小松方正はアンソニー・クインの専属吹き替え、上には無いですが久米明も出ており彼はハンフリー・ボガードの専属吹き替え、そして井川比佐志はマーロン・ブランドの専属吹き替えでございます!


 この映画では一人の男がシベリア抑留から帰国し一転して商社マンになり商社が推すアメリカ戦闘機を日本に導入させるために奮闘するんです。そしてモデルは特にない、と映画の最初に出てきますが主演の主人公のモデルは伊藤忠商事の元会長・瀬島龍三がモデルだと指摘されているそうですね。


 さてこの映画、実は原作が続いている時に映画化されたもんだからこれは途中(シベリア抑留~戦闘機選定)までしか描かれてないんです。シベリア抑留のシーンもだいぶカットされているそうで。だから言わば不完全な作品だそうです。白い巨塔といい、これといい残念ですねえ。



【あらすじ】


 太平洋戦争当時、大本営参謀だった壱岐正は11年間、シベリア抑留で強制労働を課せられ日本に帰国する。そして日本で近畿商事という大手商社に就職する。経歴を知る大門社長ら上層部は彼を優遇する。そんな近畿商事では米戦闘機ブランド・ラッキード社の戦闘機を日本に導入しようと、壱岐にその作戦を練らせるのだった。





















【以下全文ネタバレ注意】

↓四行後にネタバレ文あり





 元大本営参謀・壱岐正(仲代達也)は梅津美治郎(嵯峨善平)大本営参謀総長から満州に駐在する関東軍に撤退命令を伝えに行くよう命じられる。そして満州にいた山田乙三(小山源喜)関東軍司令官らに撤退命令を伝える。


 しかしその満州に駐在中に別の任務を課せられ、帰国のタイミングを失いやがて満州に攻め込んできたソ連の解放軍に壱岐は残っていた関東軍と共に捕まる。


 ソ連が聞き出そうとした大本営の総司令官のことをはぐらかし続けた壱岐。それは総司令官こと天皇陛下を守るためだった。やがて壱岐はシベリア抑留で11年間も強制労働を課せられる。


 帰国後、共に帰還した部下の就職先を見届けてから壱岐は元軍人が次々と入っていく防衛庁への入庁を断り大企業の商社・近畿商事に入社する。社長・大門一三(山形勲)は彼の元参謀としての頭脳を重宝したいがために彼から提示された条件を全て呑み、すぐさま繊維部門に入社させる。条件の中には軍と関わらないことも入っていた。


 正が大企業とはいえ、一般企業に就職したことに喜ぶ妻・佳子(八千草薫)や長女の直子(秋吉久美子)、長男の誠(亀田秀紀)らは喜ぶ。壱岐は戦争の経験から戦争に関わりたく無くなったのだ。しかし戦友・川又(丹波哲郎)空将補はまだ壱岐に対し政治に関心があるだろう、と睨んでいた。川又は壱岐に戦地で助けられ、シベリア抑留の期間、壱岐家を世話していたのだった。


 近畿商事は二次防主力戦闘機選定にラッキード社のF104を推していた。しかし東京商事の航空機部長・鮫島辰三(田宮二郎)らが推しているグラント社のスーパードラゴンF11が東京商事やラッキード社による政治献金で国防会議のメンバーの大臣たちに根回しされていたのだった。スーパードラゴンF11の方が有利だったのである。


 大門一三は里井専務(神山繁)と共に壱岐正をアメリカ同伴につき合わせることを企画。壱岐は何も知らされないまま渡米し、そしてラッキード社の戦闘機F104の視察をさせられる。その視察には自衛隊調査団として川又もいた。


 やがて軍に関わりたくない壱岐に戦闘機を視察させたことを壱岐は大門を咎める。しかし大門は宴会の席で川又を呼び、川又は日本への愛国心があるならば、政治家に利用されるまま国防会議でスーパードラゴンF11を選定されるより、本当に性能の良いF104を選定させるべきだ、と壱岐を説得する。


 山城防衛庁長官(内田朝雄)は国防会議ですでにスーパードラゴンF11を選定させる用意をしていた。また防衛庁の人事を握り、防衛庁の天皇とまで呼ばれる貝塚官房長(小沢栄太郎)はF11選定に反対する川又空将補を左遷しようとしていた。


 壱岐は今まで里井専務ら近畿商事上層部が頼りにしていた代議士・大川一郎がまるで使い物にならない事を知り、総理サイドの一人で国防会議のメンバー、また壱岐とは太平洋戦争時代に面識のある久松経済企画庁長官(大滝秀治)に接触を図る。


 久松は壱岐への協力を承認するが、F11の選定は総理大臣(高杉哲平)がグラント社のコナーズ社長(ジャック・ケリー)と政治献金でつながっているためにF11選定決定は避けられないと話す。そこで壱岐はグラント社からの政治献金の出所がスイスからである事を聞き出し、大蔵省に情報をリークして起動捜査させて献金を死金にしてしまう。また三島幹事長(杉田俊也)や使えなかった代議士・大川を味方に引き込む。


 鮫島は死金にされ悔しがる貝塚に大蔵省にリークしたのは近畿商事でそれは壱岐正の策略だろう、と話す。


 何としてもF104を選定させるべく壱岐はスーパードラゴンF11の日本政府に対する価格見積もり表を入手しようとする。近畿商事航空機部員の小出(日下武史)に見積もり表の入手を指示。小出は理由などを聞かされない事に不満を抱きながらも、防衛庁の芦田二佐(小松方正)に接触。芦田二佐は見積もり表を川又から盗み小出に渡していた。


 そしてそのコピーは近畿商事と、アメリカのラッキード社に値切り交渉の材料としてつかわれることとなった。


 一方、川又は左遷処分を受ける。その際に貝塚官房長に「貴様が政治の腐敗の元凶だ」と罵る。貝塚はそんな罵倒も鼻で笑うだけだった。


  そんな時、アメリカでフライトテスト中に名パイロットが運転していたラッキード社のF104が墜落した。東京商事はいち早くこの情報をつかみ鮫島は毎朝新聞の田原(井川比佐志)に情報をリークする。いかし壱岐はこの情報を広めないために久松長官に記事の停止を依頼。田原は近畿商事の裏に久松がいる事に感づき、全ての資料などを別の新聞会社の記者に渡して結局、別の新聞から情報が掲載されてしまう。


 やがってラッキード社のブラウン社長(アンドリュー・ヒューズ)が総理大臣への実弾(献金)と共に来日。ブラウン社長は会見でパイロットの操縦ミスと説明し総理大臣に大統領の親書も渡す。それはラッキード社のF104、二次防正式採用を条件に日米の外交諸問題を検討していく、とあった。


 しかし突如、芦田二佐が逮捕される。また、小出も警視庁に逮捕され二人ともスーパードラゴンF11の機密文書を漏洩してしまったことを自白した。壱岐正の命令とも自白し壱岐は警視庁に出頭。捜査二課長(高橋悦史)の事情聴取を受ける。


 その二課長の質問を次々とはぐらかす壱岐だったが二課長が、芦田が「川又の指示で壱岐に協力した」という偽の自白をしてしまったことを明かしさすがの壱岐も動揺する。二課長は文書を全て提出しなければ大門社長に出頭を要請する、という。


 帰社した壱岐は文書引き渡しの準備をしている里井専務に止めるよう言うが里井専務も大門社長も三島幹事長からの「文書を提出すればラッキードF104を選定する」という約束を聞き、文書を提出する。壱岐は川又の冤罪を阻止するべく文書提出を阻止するよう言うが、誰も聞かなかった。


 一方の川又は貝塚官房長に呼び出され、文書漏洩を咎められる。しかし川又は盗まれただけで漏洩事件には関わっていなかったため何が何だかわからなかった。やがて貝塚は川又に防衛庁永久追放を命じる。川又は貝塚を罵倒し激昂する。そんな貝塚は川又逮捕の準備を整えていた。


 壱岐は川又を家に呼び、自分が漏洩事件の主犯だと語る。しかし川又はもう何もかも諦めていたようだった。心配する壱岐をよそに川又は帰宅しようとする。家に泊めようとする壱岐だが川又はそれを断り電車に乗り込む。川又は電車の窓から壱岐と別れの手振りをするのだった。


 夜遅く、川又の妻・久代(藤村志保)から川又がまだ帰らないことと川又らしき人物が電車事故に遭った、という報告を壱岐は聞く。壱岐は事故現場に行き、そこで電車に轢死した死体が川又であることを確認し彼に詫びるのだった。


 川又の葬儀に来たのは川又と壱岐の両人とも面識がある原田空幕長(加藤嘉)と貝塚だった。原田は久代に自分が川又を見殺しにしたも同じだと謝罪する。


 しかし久代が去った後、貝塚はそんな原田を政界入りしたいなら軽率な発言は慎め、と注意するとともに、壱岐に対し遺族年金が入ることやラッキードF104選定のさいに川又が自殺ならばゴタゴタしてしまうので近畿商事にもよろしくない、と壱岐に自殺を事故死にするよう言う。


 壱岐は怒りを堪えるが別れ際に貝塚が「遺書があったら処理しておいてくれ」というセリフについに激怒し貝塚を突き飛ばす。佳子に押さえられながら壱岐は興奮しながら言う。「川又を殺したのは俺と貴様だ」


 やがて国防会議が開かれる。メンバーは原田空幕長、佐橋大蔵大臣(神田隆)、総理大臣、通産大臣(久米明)、三島幹事長、久松長官、貝塚官房長ら。正式にF104が選定され、原田一人が沈痛な面持ちのなか、通産大臣の「グラント・スーパードラゴンF11よりラッキードF104の方がスマートで良いですな」という発言に大笑いする悪党な政治家たちがそこに居た。


 一方、鮫島辰三は新しい米戦闘機を探しにアメリカへ出発。しかし壱岐正は商社マンの自分に嫌気が差し大門に退職願を渡す。大門は「川又空将補の死で自分を責めるのは分かるが、それで辞めるようでは甘い」と一喝する。それでも壱岐は会社を去る。しかし大門は不敵な笑みを浮かべ退職願を破り捨てるのだった。


 今日もまた、アメリカの空で戦闘機が飛んでいる。





 とにかくこの映画は豪華俳優陣たちによる名演技が素晴らしかったですね。小沢栄太郎をはじめとする悪役俳優たちも素晴らしい演技でした。特に貝塚官房長は本当に憎たらしい。


 さてタイトルの「不毛地帯」について考えてみました。この映画が製作されていた当時はまだ原作が続いていたので戦闘機の選定までしか映画化されていませんが。本来の意味は「作物の生育に向かない土地」だそうです。ではこの映画での「不毛地帯」の意味とは・・?


 私なりに考えると、この不毛地帯は壱岐正と近畿商事の関係では、そう考えました。壱岐正は最後、自分に商社マンは向かないと大門社長に言って退職願を渡しました。多分そういう事ではありませんかね。