『梅雨将軍信長』感想


まず、プログラムにあらすじが書かれていない。
そして、各人物についての説明も書かれていない。
織田信長や明智光秀はいいだろう。
しかし、平手左京亮という聞き慣れないこの人物が誰なのかが全くわからない。
もちろん、観ていればなんとなくレベルではわかるのだが。
この作品の原作を読んでいないので、そりゃ、もちろん桶狭間の戦いとか本能寺の変とかはわかるけれど、もし、観る人に知ってほしい何かがあるのであれば、解説としての、この作品の世界感のようなものは提示しておいてもいいと思う。
わからないまま観てほしいという意図があるのなら話は別だが。

ちょっとネットを見てみると、平手左京亮は、平手政秀の弟ということみたいだが、架空の人物だとのこと。
そして、天気をみて戦略を助言するという、軍師っぽい特別な役割の人という位置付けのようだから、やはり解説は必要だろう。
名前の読み方もわからない。

左京亮は、どうやら、信長の配下の者だが、戦(、その他)の時期を読める人物ということで、占える鼓を使って、桶狭間の戦いで今川義元を討つ時期を探った。
ちなみに、鼓はナマで打っているようだ。
そんな信長と左京亮+光秀の関係を描いていると思われる作品で、歌舞伎、能テイストの迫力のある舞踊の時間の比重が大きく占めている。
(ストレート)プレイではない、芝居というか、ミュージカルとも言い切れない、歌舞伎や能の舞踊のテイストがふんだんに入った、ショーテイストの舞台。
これをミュージカルといっていいのかちょっとよくわからない。

ちなみに、客席降りもあった。

最初、殿…、とは信長のことみたいだが、誰のことをいっているのか分からなかった。
すべての人物において、人物やその関係がわかるような仕込みは特に無い。

信長は、桶狭間の戦いや長篠の戦いでは、左京亮の鼓占いの進言を受け入れ、勝った。
しかし、中国毛利攻めにおいては、赤い彗星だったか、赤気(せっき)が不吉だから進軍はやめるべきとの左京亮の進言を受け入れなかった。

この辺で信長は左京亮とぶつかり始める。
信長は、自分で決めるのだ、と。
いままで進言を受け入れたのも、それ(進言を受け入れるかどうか)自体、自分で決めたものだと。
そんな尊大な態度をとる。
そして、光秀との一件を経て本能寺の変を迎える…。

壱弥さんの左京亮も、主演の椿さんの信長と同じくらい、この作品では比重が大きい。
さっきも書いた通り、歌舞伎、能テイストの迫力ある舞踊の時間の比重が大きく、歴史の流れをショー化した感じ。
この作品で、女性は濃姫だけ。
ラブストーリー無し。
別のところでも書きたいが、この辺がOSKの課題の一つかなと。
そういう作品なんだというのであればそれまでだけど。
OSKを今後末永く維持していくためには、どういう路線で行くのか、どういう劇団であるのかということはしっかりと考えていかなければいけないと感じる。

…いま、あとで、特設サイトのあらすじを確認したのだが。
確かに、この舞台でも、梅雨がキーポイントとして描かれている。
なるほど、桶狭間の戦いにおいても、長篠の戦いにおいても、梅雨という長雨と巧く向き合うことで信長を勝利へと導いたが、中国毛利攻めのときは赤気が現れ、梅雨がなかった。
なので、左京亮は、異変…、それまでのように梅雨という長雨を巧く使えないから今年は(?)打って出るのはやめるべきだと…。

(あと、赤気があれば、身内に乱が生ずると?)
しかし、進言を受け入れなかった信長は…。
ここは物語のキーポイントだから、もっと厚く丁寧に描いてもよかったかもしれない。
あと、そもそもの、信長と左京亮との出会いのくだりも大切なところだと思うから、もっと時間を割いて丁寧に描いてもいいのかなと。
信長と、特殊な能力を持った左京亮との出会いと別れの物語。
基本的なことは描かれていたとは思うのだが。

 

信長も大概特殊な人格だと思うのだが、左京亮も、ポーカーフェイスなのによく動く感じの人物という風に、ちょっと変わった空気を持っているので、話の筋も人物像も肉付けして、作品自体まだまだブラッシュアップできるのではないかと思う。