村上春樹著「猫を棄てる」を読んで | 花鳥風月人情紙風船

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照る日曇る日第1407回

 

 

「父親について語るとき」という副題のとおり、作家が彼の父親について、いつものような流暢な小説の語り口とは正反対の、どもりながら訥々と語った小冊子で、彼の文学世界とは何の関係も無い個人的な話だと思うが、なかなか興味深い人物だと思った。

 

ところで村上春樹は好んでこの「何ナニをするとき何々する」という言い方をするようだが、「犬が西向きゃ尻尾は東」みたいで、妙にカッコつけてるだけの無内容なフレーズだから「父親について語る」にしてもらいたいものだ。やれやれ。

 

誰しも父親、特に戦争中に南京なんかに行った兵士について語るのは大いにはばかられることだと思うが、それで自伝を父と一緒に猫を夙川の香櫨園の海岸に捨てに行ったことからはじめているのは頷ける。

 

私なら、父が自転車で青大将を由良川に捨てに行ったところから書くだろうな。

     一条の飛行機雲なし夏の空 蝶人