2020年8月16日NHK・Eテレで「クラシック音楽館 いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台」が放送されました。ドイツ大手プロダクションのアーカイブに-4度の環境で冷凍保管されていた35mmフィルムには、カラヤン、バーンスタイン、ベーム、クライバーなど、20世紀の巨匠たちの名演奏がマスター・ネガとして収録されていました。今回NHKではそれらの貴重なフィルムを独自に8Kの超高精細映像と22.2ch立体音響にリマスターし、伝説の演奏を現代に復活させたものを放送したのです。録画した演奏を観て驚きました。映像がとてもきれいで、音響も厚み、深み、広がりがありました。但し、クライバーのブラームス・2番は高域がギスギスした音像でちょっとがっかりしました。もっとも、私の使うオーディオシステムが超高級でないのが原因かもしれません。

「交響曲第4番 ヘ短調 作品36から第1楽章」 チャイコフスキー作曲 (指揮)ヘルベルト・フォン・カラヤン、(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (18分14秒) ~1973年12月 フィルハーモニー(ベルリン)~。

カラヤンと言えばR・シュトラウス、ワーグナー、ブルックナーなどのドイツロマン派の音楽を得意とした指揮者と思っていましたが、チャイコフスキーもとてつもなく素晴らしく感動しました。たった第1楽章のみというのが残念でした。

「交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」から第4楽章」 ベートーベン作曲

(指揮)レナード・バーンスタイン、(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、(ソプラノ)ギネス・ジョーンズ、(アルト)ハンナ・シュバルツ、(テノール)ルネ・コロ、(バス)クルト・モル、(合唱)ウィーン国立歌劇場合唱団 (26分29秒) ~1979年9月 ウィーン国立歌劇場~。

バーンスタイン、私はあまり好きな指揮者ではありません。しかし、この第九の第4楽章には脱帽しました。敬服します。素晴らしい演奏です。気まぐれなウィーン・フィルを意のままにドライブしているのに驚きました。第1楽章から全曲を聴きたかったです。

ソリストたち。左からギネス・ジョーンズ(ソプラノ)、アンナ・シュバルツ(アルト)、ルネ・コロ(テノール)、クルト・モル(バス)。往年の名歌手たちです。

「交響曲第40番 ト短調 K.550から第1・第4楽章」 モーツァルト作曲 (指揮)カール・ベーム、(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (13分40秒) ~1973年6月 ウィーン楽友協会大ホール~。ベームといえばモーツァルト。第1楽章などテンポが遅いのですが、聴き込んでいるうちに、これが悲しみのシンフォニーにぴったりのテンポなのだと納得がいきます。一点の曇りもない気品あふれる演奏です。第2・3楽章も放送してほしかった。

「交響曲第2番 ニ長調 作品73」 ブラームス作曲(指揮)カルロス・クライバー、(管弦楽)ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 (38分56秒) ~1991年10月 ウィーン楽友協会大ホール~。最後はこの方、私の大好きなカルロス・クライバーです。数多くの指揮者がこの曲を振っていますが、クライバーとウィーン・フィルの1991年10月の演奏は永遠に輝く名演です。演奏そのものも立派ですが、何といっても、観客ばかりでなくオーケストラの楽員をも魅了した独特の流麗優美な指揮姿でしょう。タクト、手指、体の使い方など本当にうっとりしてしまいます。舞台での華麗さとは裏腹にリハーサルでは神経質なまでに緻密だったそうです。例えば楽曲のある部分では弦楽器の弓使いをプルト(譜面台のこと。オーケストラでは弦楽器奏者が2人で1台の譜面台を見ることから、奏者2人を1プルトと数える)ごとに上下逆に弾かせるといったことをしたそうです。当日の番組の解説者の一人である高関 健(指揮者)さんは次のように述べています。「ファーストバイオリンの中でもよく見ていただくと、ある奏者はダウンボウで弾いているのに、後ろの奏者がアップで弾いている場面が出てくる。これはクライバーの指示だと思います。ウィーン・フィルがいつもしているわけではない。普通はボウイングが合っているのが常識。それがわざわざこういう風に弾かせている。4分の3拍子でダウン・アップをやっていくと必ず1小節目と2小節目がアップになる。そうすると不均等が起きる。それを出さないためにあえて逆弓を弾かせる。表現の均一さを目指しているのだと思う。そうした工夫がクライバーの映像から見える」。実際に映像をみるとまさにそのとおりでした。クライバーがただものではないということでしょう。

超精細デジタル技術によって21世紀に甦った伝説の名演に感動し、長生きするものだなぁ、と思うしだいです。

 

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