『えー!』
三人の声が長い廊下に響き渡った。
「頼むから廊下で騒ぐのはやめてくれ。詳しいことは後ほど説明するのでしばらく黙ってついてきてくれないか」
三人はしばらくぼそぼそとなにやら話し合っていたが、この場は黙ってカナルの後をついていった。
重厚な扉が開けられると執務机の向こうに二十代後半と思われる男が眉間にしわを寄せながら座っていた。この男がカナルの兄であり、この地を治めているジゼル・ウィンストンである。
スッとカナルがその場に跪く。
「執務中失礼いたします。この度は急なお願いにもかかわらず快諾して頂きました事、心より感謝いたします」
するとジゼルはカナルの傍へ着てにこやかな笑顔で話しかけてきた。
「何を堅苦しいことを言っている。ここはお前の家だろう。まったく、出て行ったきり連絡もよこさないで皆寂しがっていたぞ」
「申し訳ありません」
「いいってことよ。それだけ頑張っているということだ。それにしてもよく訪ねてきてくれた、ちょうどデスクワークにも飽きてきたところでな」
そういいながらジゼルはコキコキと首を鳴らし始めた。すると横に立っていた執事らしき男が大きく咳払いをする。
「わかっている。少しぐらいの息抜きは構わんだろう?」
ジゼルはため息をつきながら再び執務机に戻ると、その上に手を組んで肘を着く。
「相変わらずですね、兄上・・」
今まで硬い表情をしていたカナルの顔が緩む。
「どうも事務仕事は苦手でな。・・・・それにしても男は家を出て独り立ちすると変わるというが、まさかお前が女の人を連れて訪ねてくるとはな。で、どちらがそうなんだ?」
小指を立てニヤニヤとジゼルが笑う。
「兄上!」
こめかみに血管を浮き立たせながら低い声でカナルが唸る。
「なんだ違うのか? 少しは砕けてきたかと思ったのに・・・。まあいい、それよりお前の連れを紹介してくれないか?」
「はい」