映画 ディア・ファミリー(2024.6)
観た.面白かった.
以下は,この映画の感想と言うより,その元ネタとなった実話について話していく.
愛知県春日井市で
女性の髪留め・縄跳び・ホースなどを製造する
ビニール製品樹脂工場の経営者・筒井宣政(1941-)
名門東海高校時代は柔道で団体で全国優勝もし柔道4段.
関西学院大学経済学部を1964年3月に卒業した.
父が設立した工場に入社して引き継ぐが,父が残した膨大な借金があった.
短大時代の陽子さんを筒井氏が追いかけまわして二人は結婚し,
三人の娘を持った.
次女佳美(1968-1991.12.14)が先天的心臓疾患のために
9歳の時に余命10年と宣告されてしまう.二十歳まで生きられないとのこと.
9歳だから1977年ごろか.
東京女子医科大学病院の医師に勧められて夫婦は人工心臓の研究を開始する.
人工心臓の開発は諦め,
1981年に東海メディカルプロダクス社を創業し,
IABPカテーテルの開発に転向した.
IABPとは大動脈内バルーンポンピングの略.
https://www.tokaimedpro.co.jp/news/item/2f0f0e1e38232c99b476661b5d0bd4447c0c3d2c.pdf
一年半かけて数々の難題をクリアし,国産カテーテルの開発に成功するも,
耐久試験・発がん性などを懸念する東京女子医科大学の教授には何度もつっかえされてしまう.
そのたびに試験を繰り返して持っていくが,ついに教授には
「どこの馬の骨が作ったか分からないものを医師免許をかけて使えない」
と研究室出入り禁止にされてしまう.
それで東大にも売り込みに行くものの、東京女子医大の手柄をとってしまうことになるという医学界内部の仁義の問題で頓挫してしまう。
半年後改めて筒井は東京女子医大教授のもとへ行き,こう尋ねる
「血管の直径や身長体重などの関係を調べて教え子の博士論文のテーマにしたらどうでしょう」
欧米人向けに作られた輸入カテーテルでは駄目で国産カテーテルが有効なことの実証実験を
博士論文のテーマとして提案したら,一人の若手医師が乗り気になった.
「私一人にやらせてください」
その若手医師にとって最初は論文テーマにすぎなかったが,実証実験が成功すると筒井氏の支援者になった.
そして若手の医師らの間で噂になり,
嫌がられた教授からも呼ばれ,
「私にも一本使わせてくれないか」
と言われると,筒井はこうやり返す
「若い先生方にはサンプルとして無料で配りましたが,先生は購入していただけますね?一本40万円を二割引きにします.」
筒井からしたらしてやったりということか.お買い上げ第一号というわけだ.
1989-90年販売開始.
1991年12月次女死去.
人工心臓は未だに未完成.
実話を調べて思った事.
映画ではことさら,町工場のお父さんが娘のために人工心臓を作り,それが駄目だと分かったが,人の命を救う国産カテーテルの開発へと向かっていった.様々な困難の中,実用することに成功した.
ところが,実話を調べてみると,この筒井さん,愛知県内では押しも押されもせぬ一番の名門校・私立東海高校を出ている.
その高校時代で柔道で全国優勝もしていて,柔道4段.
ただのおっちゃんじゃない.
東京女子医科大の教授に出入り禁止にされて半年後に,また出向くという粘り強さ.そして博士論文のテーマにしてみては,という機転が利く当たり.
すごく優秀で聡明な人だ.
東海メディカルプロダクツ社は現在,筒井夫婦の娘婿・筒井康弘氏が社長をしている.
筒井氏のカテーテルは17万人の命を救った.
佳実さんは小学校でも私立金城学院中高でも虐めを受けている.
私立お嬢様学校でも酷いいじめがあるものだね。
佳実さんが小学校で虐めを受けた.心臓が悪いため色白で唇も青い.それで死人と呼ばれ傘の先でつつかれた.妹が「お姉ちゃんに何するの」と抵抗し,妻・陽子は校長に訴え,校長は全校集会を開き,陽子も呼んだが,「我が子が虐められた話なんか,その親が聞けると思うんですか」と泣いて訴えた.
分かるよ.学校関係者は分かってないんだよね.