受験勉強ネタ.

 

玄人思考さんのブログ記事を読んだ.

 

面白かったです.

”偏差値が上下する原因”として理由を4つあげていた.

私なりに解釈すると以下のよう.

1.確率的振れ

2.出題される分野・単元の得意・不得意

3.新入塾生など母集団の変化

4.心理的理由(最高値を基準にしているため心理的に過敏)

 

(4は上下する原因というよりは,下がって当たり前のことを大げさに思っている不幸な心理作用のことだと思います.)

 

私もおおむね同意します.以下は私の感想です.

 

 もうひとつ原因として私が考えたのは(1と2の中に部分的には含まれるかもしれないけれど)

問題の難易度・質の変化による成績分布曲線の形状変化

です.それによって偏差値は変動します.

 

例えば下のサイトのpdf(全3ページ)のグラフを見てください.

https://dn-sundai.benesse.ne.jp/dn/center/doukou/dl/2024-dn-gaikyo-05.pdf

これは過去三年間の大学共通テストの成績分布図です.

 

1ページ目の総合得点や国語の成績分布だと3年とも似たようなカーブを描いていると言えます.

ですが,国語以外だと3年間でかなり違う曲線を描いている科目がけっこうあります.

 

例えば上位16%(偏差値60)の人が,上位2%(偏差値70)の人と競っている場合を考えましょう.

成績分布が正規分布なら1標準偏差分の開きがありますから,

標準偏差が大きい科目の方が差がつくはずです.

 下は2023・2024年大学共通テストの標準偏差.

https://dn-sundai.benesse.ne.jp/dn/center/doukou/dl/2024-dn-seiseki.pdf

例えば2024年だったら標準偏差は

外国語34.3

数学38.5

国語35.0

なので,偏差値にして

英語70数学60国語60の人E

英語60数学70国語60の人M

英語60数学60国語70の人J

の三人に対して総合点順位は

M>J>E

となります。

 2023年だと

外国語37.2

数学37.2

国語33.8

なので,

M=E>J

となります。

EとJは逆転してます。

 

 受験生の実力も体調も変化がなく,母集団もほぼ変わらず,出題分野も幅広くバランス良くでていても難易度や質といった出題者側の変化によって,偏差値が変わってくるのです.

 

 

 それから,偏差値と言うのは成績分布が正規分布に近いときに有効な話であって,そうでなければ、かならずしも得意科目の標準偏差が大きい方が有利というわけではありません。

というのは,試験の点数と言うのは満点と言うのがあり,例えばそれが100点とすれば,0-100点までの範囲しか取りません.正規分布はー∞から∞までとります.

 ですから,例えば,全受験生の半数が0点で半数が100点であれば,

平均点50点,標準偏差50になります.

全受験生の半数が偏差値40で,もう半数が60です.

100点満点をとっても偏差値60を超えません。.

上位の受験生は下位の受験生に対しマックスの100点差をつけることができましたが,普段偏差値70の実力の人は60の実力の人に差をつけることができません.

 

 これは極端な例ですが,実際にも似たような現象は起こります.

よく難関大学二次試験で数学や物理学で難問ぞろいの年があったりします.すると0点が続出することがあります.すると0点とか,あるいは6問中一問完答くらいでも他の科目で充分挽回可能で合格できたりします.100点なら偏差値80,90超えますが0点でも偏差値45とかで,その年はその科目が苦手な人でも致命傷を負わないわけです.

 例えば東大理科一類の昨年だと実質倍率2.5倍。なら上位40%、偏差値にして52.5(注1)で受かるわけです。受験者平均点がかなり低い科目であれば、苦手科目が0点でも偏差値52.5の人に大差とはならない事がありえます(逆にその平均点低い科目が得意なら、偏差値80,90とって大差付ける事も可能。数学物理ダメでも他が出来るなら合格させちゃう一方で、数学物理大得意な人は優遇する。満点続出する試験だとこうはならない)。


 偏差値70オーバーの人はよく聞きますが,偏差値30アンダーの人はあまり聞きません.正規分布なら同数いるはずです.後者は恥ずかしくて言わないというのもあるでしょうが,試験問題は100点続出するものより0点続出するケースのほうが多いという傾向もあると思います.

 

これに関連した記事(受験ネタ、偏差値について)を次回書きます.

 

(注1)

次回記事で

上位40%が偏差値52.533になる計算方法を示します。


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