(過去記事1)の続き.

 

1938年から長期にわたり700人以上の人々のインタビューから何が幸福と健康に影響するのかがハーバードで研究されてきた.

その4代目の研究責任者Robert WaldingerがTEDで講演していた.2015年11月.

 

 

 

12:38と短い講演で,英語だが日本語字幕も出る.日本語スクリプトだけ文章として読むこともできます.

 

要約します.


彼ら研究チームは,

最も大切な人生の目的は何か

 

と若者に尋ねた.

 

80%以上の答えは,

富を蓄えること

と答え,

50%のもうひとつの大きな目的は

有名になること

だった.

 

 自分の選択がどう人生を描いていくかを予測するなんて殆ど不可能です

と彼は言う.同感.このブログで私は何度も書いてきた.

 

 このハーバードの研究は,史上最も長期にわたって成人を追跡した研究である.ほとんどの研究は様々な理由で10年以内に頓挫してしまう.

 

 75年間724人の男性を追跡し,現在でも60人は存命中.ほとんどが90代.

 1942-44年ハーバード大2年生を主とする第一群と,ボストンスラム街の貧困家庭の10代の少年たちの第二群。一年おきに電話したり会ったりして調査してきた.2000人の彼らの子供たちにも調査した.

 彼らは,工場労働者・弁護士・レンガ職人・医師になったり,一人は米国大統領になった.(第一群に1940年ハーバード卒のJ.F.Kennedy(1917.5-1963.11)がいた).アルコール中毒者や統合失調症になったものもいた.

 

 この研究から分かったのは,

 

我々を幸福で健康にするのは,富でも名声でも無我夢中で働くことでもなく,良い人間関係に尽きる

 

と言うこと.

 3つの教訓.

1.周囲とのつながりは健康に良い.

2.身近な人たちとの関係の(数ではなく)質が重要.

3.良い人間関係は身体の健康だけでなく脳も守ってくれる.

 


私なりの要約はここまで.

 

 そうなんだよね.人間を生涯にわたって研究した結果ってほとんどないんだよね.

このハーバードの1938年以来の研究が史上最長.

 

 本当は,女性の人生とか,知的障碍者の人生とか,自閉症児の人生とか,80年スパンで追って研究してみたらとても面白いことが分かると思う.

 

 そういったことが分かっていなくて,幼稚園教諭は幼稚園児からせいぜい小学校低学年まで,小学校教諭は小1からせいぜい中学生くらまで,中学校の先生もせいぜい高校生か大学生までしか見ていない.大学教員も高校生から就職数年目くらいまでしか視野が無い.

 

 学校の教員は,まさに

上の若者が目指していたように,富や名声をめざして

がむしゃらに努力しろ,成果を上げろ,それが人生の目的だ

と言わんばかり.塾の教師が合格数をあげるのと結局は同じなんだよね.

 80才になったときの幸福の事を考えて小学生を教育するという発想はない.その責任もないしね.

 

 どの学校に入ったにせよ,それが吉と出るか凶と出るかは分からない.そういえば大統領にまでなったハーバード大生は46才で銃殺されたしね.

 

 

(過去記事1)