前回の(過去記事1)では,暴行を受けても学校は現状

認知した暴行事件のほとんどで警察へ相談・通報しないと述べた.

 

2022年度の数字では,学校が警察へ相談した件数の暴行認知件数に対する割合:

小学校0.1%,中学校1.0%,高校2.1%,特支学校0.9%.

 

文科省では警察へ相談・通報するように指導していて,

各学校の学校いじめ防止対策基本方針には

たいて,警察・児童相談所との連携

とあるのにも関わらずのこの数値.


 

いじめ少年犯罪に宣戦布告
著者/プレスプラン編集部

 価格:    1,524円 +税
頁数:    230ページ
判型:    20.8 x 15 x 2 cm
ISBN:    978-4861130403

 

上の本の最初の方で,

暴行を受けた際のアドバイスが載っていて,かなり有効だと感じたことがあるので,

それを私なりにアレンジして紹介する.

 

それは,簡単なことだ.

 

暴行を受けたら,119番通報する.

 

これだけだ.

 

110番(警察)ではない.119番(救急車)だ.

 

暴行を受けたら怪我をしているだろう.出血していなくても痛みをうけているはずだ.

そのまま放置していたら何か大変なことになるかもしれない.119番で救急車を呼ぶのだ.

自分の足で病院へいくとか,薬局で買った薬・絆創膏ですますとかしてはならない.

そうやって自分の体の不調を過小評価してはならない.

あなたは医師ではない.救急車ですぐに病院へ連れて行ってもらって,専門家に診断してもらおう.

理不尽な暴行を受けて心も痛んでいるだろうし,外見上はたいしたことなくても,気持ちも悪くなってたろう.

今は痛くないところが痛み出すかもしれない.

だから,119番通報して,至急救急車に来てもらうのだ.

 

救急隊員が来たら,病院に連れて行ってもらうように,体の不調を訴えよう.

 

そうしたら,”どうしました”と聞かれるだろう.

正直に答えよう.”暴行を受けました”

救急隊員や医師なら,学校教師と違い,必ず警察へ通報してくれる.

駅で女性が駅員に”この人,痴漢です”と言ったら,駅員は必ず警官を呼ぶのと同じことだ.

被害女性と加害者とで握手をして仲直りしてまた明日は同じ電車に乗るように

なんてことは駅員は言わない.(これ以上のことを教員が言うのはひどいもんだ.)

 

そして病院では必ず診断書をもらう.有料で自己負担なので二千円から一万円くらいかかるが,それは払おう.

文書として証拠になる.それで暴行されたという事実が残り,警察も学校も裁判所も動いてくれる.

 

もう,これで二度と同様の事件は起こらなくなるだろう.

警察へつながった後で,暴行犯から報復を受けることは殆ど無いはずだ.

もし報復された場合は,また同じことをしよう.119番通報だ.

また警察へつながる.今度はもっと酷い仕打ちが暴行犯に待っている.

彼らは警察沙汰にならない暴行を何回も繰り返して,それで成功体験を積んでしまっているのだ.

失敗体験として学習させてあげよう。

 

 仮に,暴行犯やその保護者ら教員らから,警察へ通報したことに対して,

通報者が批判されるようなことがあれば,こう言ってやればよい.

私は110番通報していない.具合が悪かったので119番しただけ.あとは警察につながった.

 

嘘ではない.本当にそうなのだ.今や昔と違って,警察はスムーズに動いてくれる.子供の人権侵害に敏感になっているのだ.

そしたら警察の勧められるままに状況を説明すればよい.

児童相談所や少年院は刑罰の場所ではなく,教育の場所である.加害少年にも愛をもって告訴するのは,大人の役目だ.

早期に特別な支援・保護をする必要がある(過去記事1).

古いタイプの教員にはこの感覚は無い.それが学校が人権侵害の温床であり続けてきた理由だ.

 

 上では暴行と書いたが,病院から出た診断書で怪我・病気が認められれば,

暴行罪から傷害罪へ格上げされる.

被害者の君は気分が悪いという事で119番通報しただけなので,診断書でどうなるかは医師が決めることで,被害者の君は気にしなくてよい.気分が落ち込んでいたら落ち込んでいると医師に話そう.痛ければ痛いと伝えよう.正確な診断を降ろしてくれる.


 

ちなみに暴行罪と傷害罪の違いは

被害者がケガをしたり病気に罹ったり

するかどうかだ.

胸ぐらをつかまれたら,それで既に暴行罪成立

だ.

 

怪我をしなくてもうつ病になれば傷害罪成立である.

翌日から不登校になってしばらくして病院に行ったらPTSDとかうつ病とかの診断書がでるだろう.

 

 刑法でも,暴行罪と傷害罪はだいぶ違う.

 

    (暴行)
    第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処す
    【引用】刑法第208条

    (傷害)
    第二百四条
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
    【引用】刑法第204条
 

 2年から15年へと7.5倍へ膨れ上がる。


 犯人が14歳未満の場合は刑事未成年となり,暴行罪・傷害罪は成立しない.14歳以上の場合は,暴行罪・傷害罪として逮捕される.ただし未成年の場合は考慮される要素はあるが,刑事事件として捜査を受ける点では成人と変わらない.

 

 

 

 ヤクザが一般人と違うのは,刑法に触れた場合に刑務所に入る覚悟があるかどうかだという.だからどれだけの事を犯せばどれだけの量刑が待っているかは,良く知っている.一般人は法律家でも無ければ,合法か違法かだけで思考が止まり,違法だった場合の捜査・量刑までは考えが及ばない.実際の量刑よりも勤務先を首になったり退職金取り上げられたり,実世界のほうでのペナルティが大きく,失うものが少ない無職・自営業自由業とは立場が違うわけだ.(ラーメン店に入るのに,店長に前科があるか調べてから決める客はいない)

 スポーツ・格闘技と同じで暴行にもルールがあるということだ.そのルールを知っているのと知らないのとでは違う.筋肉ムキムキの巨人に向かって喧嘩は仕掛けないだろう.法律を知っている人にも喧嘩は仕掛けないものだ.

 

 

暴行罪での慰謝料の相場

10-30万円

だが,

傷害罪,けがによる治療費や休業損害などの賠償金がプラスされ,

10-100万円が相場

となる.

後遺症が残るようなケースだと,民事裁判になれば数千万円から一億円以上の損害賠償が認められることもある.

 

 まあ民事裁判は1年から1年半かかり,敗訴側は裁判費用も払うことになるので示談になる場合が多いだろう.

 

 加害者が未成年の場合は,早い段階で児童相談所などへ連絡し,特別な支援・保護を受ける必要がある.

往々にして家庭環境が悪いので,その環境から話してやらなければ更生できない.

 

ちなみに,

暴行罪の時効は,

刑事上は,犯行から3年(刑事訴訟法第250条2項6号)

民事上は,損害と加害者を知ったときから5年と暴行から20年の短い方(民法第724条の2参照)

 

傷害罪の時効は,

刑事上は,犯行から10年(刑事訴訟法第250条2項3号)
民事上は,損害と加害者を知ったときから5年と暴行から20年の短い方(民法第724条の2参照)

 

 やはり暴行罪と傷害罪は罪の重さがかなり違うわけです.この意味でも診断書を受け取っておく利点はあるでしょう.仮に1度目の暴力事件でそのままになっていたとしても,それから10年以内に再び事件があれば,さかのぼって告訴することもできるわけです.これは大きな抑止力となります.ちなみに文科省の定義するいじめ行為は,3か月たつまで虐め事件解消とは判定できません.

 さらに,刑事上の時効は,犯行が終わったときから年数を計算するわけだが,傷害罪の場合は犯罪行為が終わった時と言うのは,暴力行為が終わった時ではなく,障害が発生した時である.暴力行為が終わって相当期間がたった時点で後遺障害(PTSDなど)が発生した場合でも,その後遺障害が発生した時点から公訴時効は進行します.

 

 親告罪は告訴期間が6か月という縛りがありますが,暴行罪・傷害罪は非親告罪なので,この縛りはありません.

 非親告罪なので、被害届や告訴状がなくても犯罪としては存在することになります。警察は相談や噂など何らかの形ででも事件を認知すれば、捜査するかどうかは警察自身が決めます。警察は捜査するのに被害者の願いは必要ないわけです。そこが親告罪との違いです。

 

 

(過去記事1)