佐藤ママとひろゆき氏の論争で注目される「遺伝と学力の関係」 一方で「両親が高学歴なのに受験で苦戦する」子供もいるのはなぜか

杉浦由美子

 

上の記事を読んでみた.第一回から第六回(最終回)まで読んだ.

 

 記事の中で遺伝について,親の遺伝子のことと子の遺伝子のことが混同していて読みにくかった.

親の遺伝子が良くても,子に遺伝しないことはあるだろう.

ヒトの染色体23対のうちの46体それぞれが,父または母の2本のうちどちらかから受け継がれるので,

子の染色体のパターンは2^46=70兆通りあるわけだから.

 

 おそらく偏差値70(上位2%)の両親の一人っ子よりも,偏差値50の両親10組の子ども30人の中のトップのほうがおそらく頭がよい可能性の方が高いだろう.いや、むしろその一人っ子が31人中最下位の可能性だってかなり高いとは思う。そのことは過去記事1,2に書いた。

 

 

 親ガチャよりも受精ガチャ

の方が影響が大きいと思う.

 

 いったん生まれてしまえば,その子の遺伝子は一生変わらない(基本的には).

その遺伝子と学力は強い相関があるだろう.

 

それを調べる方法がある.それは一卵性双生児を比べることだ.

 
第一回記事によると,

 

15歳児の体重や身長は9割が遺伝の影響があるとされる。音楽の才能は体型と同じほど遺伝による影響があるとされ、数学もそれと近いようだ。ここでいう才能というのは、いくつかのテストをして測っているものだ。

 

第二回記事では

 

東大附属の双生児研究によると、一卵性双生児で成績に差が出ないのは音楽や体育で、最も差が生じるのが数学と物理であるという。

 

一卵性双生児の間では,体重・身長・音楽・体育は9割がた同じで,数学・物理もそれにつぐものの,音楽や体育程は差がつかないという.

 

これはどう解釈したらよいか.

たぶん測定したテストの種類に依存しているからだろう.

音楽・体育はほとんどの場合,真剣には練習はしない.

一卵性双生児の片方がプロを目指して猛特訓し,もう片方が全くやらないでいたら,差は広がるだろう.とはいっても,音楽・体育でプロレベルなんて人口の1%未満だろう.だから10人中何位かで計ったら,プロレベルは1位間違いないが,その一卵性双生児が練習しなくても素質だけで10人中1,2位まではいくだろう.10人中8ー9人は練習量なんて大したことないだろうから.

 

しかし,数学や物理は,それよりはずっと多くの人が努力する.だから,数学・物理の才能があっても,努力しなくて公式すら覚える気なければ,それを覚えた鈍才の方が成績が上になるのはあたりまえだ.

それに,数学や物理は,その科目の特性から,点数分布が正規分布になりにくい.ある技法をマスターできていればその分野は得点になるが,マスターできていなければ得点にならない.暗記ものであればマスターすべき個々の事項が小さく,量が多い.だからやった分だけ点数になる.しかし,数学や物理は,ある閾値を超えて初めて点数になるのだ.ある意味100点と0点に分かれる.つまらない計算ミスをして部分点で90点とかつくくらい.数学・物理はマスターすべき事項が少ないが,一個がハードだ.

そのような科目というかテストの性質による.

 各科目の標準偏差を見てみればよい.たいていの場合,数学が一番標準偏差が大きく,国語が一番小さい.

 

 中学受験とか大学受験とか,科目によって,受験する学校の試験によって,試される知能も技術も違う.

 

 中学受験とかに金をかけている親とか見ると哀れに思う.親はあぶく銭使ってるだけかもしれないが,特に子供が哀れ.逃げ場所がない.

(過去記事3)でもそのことは書いた.

 

 偏差値60の子を70にする方法があるのなら,偏差値30(IQ70)の子を偏差値40(IQ85)にする方法もあるはずで,そのほうがむしろより容易で有意義かもしれない.抜く人数は同じでも。


でも,そんな方法はない.

だからこそ知能を重視するのだ。

 

 教育業界や証券業界は,無いもの,出来ないものを,あたかも出来るかのように嘯いて金を稼いでいるビジネス.ヒトは信じたいことを信じる.

 

 意図的に親が子をどうかすることは出来ない.意図的に悪くすることは出来るが.虐待とかで.

 

 

 過去記事1,2

 


(過去記事3)