そんな栗坂の思いが美香子を支えていたが、美香子は栗坂の重荷になることは嫌だった。だから、もしカウ天使に本当に力があるのなら、その力にすがりたいと探していたのだ。
  美香子がカウ天使を知ったのは、インターネットで見た誰かのツィートだった。『好きな人と付き合いたいです。カウ天使が本当にいるのなら、どなたか私に譲ってください』そう書かれていた。気になって検索した。カウ天使、それは願いを叶え幸せへと導く、頭が牛で体が天使の高さ10cm位の人形。そこに、イメージ画が載っていた。見たことがない人が聞き伝で描いたというその画は、やけにリアルな牛の頭に内股の天使の胴体。背中に羽根があるが、あまりかわいいとは言えない、むしろ少し不気味な人形だった。
  それ以来、美香子はその人形を売っている所を探していたのだが、どこにも載っていなかった。美香子からその話を聞いた栗坂も、あちこち手を尽くして探した。
  だが、いくら探しても、どこにあるのかどうすれば手に入るのかわからなかった。迷信かもしないと段々とあきらめかけていた。
  それを、栗坂が偶然見つけて、美香子にプレゼントしたのだ。美香子の喜びようといったらなかった。心臓に負担がかかるからと落ち着くように美香子の気持ちを鎮めるのが大変なほど興奮状態にあった。美香子は、これで心臓移植のドナーがすぐに見つかるかもしれないと胸を膨らませた。