「アシュラ」や「私の頭の中の消しゴム」などの好演が記憶に残るチョン・ウソンは、長塚京三にちょっと似た魅力的な俳優だ。そのウソンが50歳を目前にした一昨年に監督デビューを果たし、自ら主演したのが「ザ・ガーディアン 守護者」(26日公開)だ。



 殺人の罪で10年の懲役を終えた犯罪組織の元幹部スヒョク(ウソン)が出所する。恋人と再会した彼は、彼女との間に女の子が生まれたことを知り、組織と縁を切って堅気になることを誓う。が、腕の立つ彼の存在を疎ましく思う組織は殺し屋を差し向ける。



 不意打ちのさなかに恋人を殺され、女の子を人質に取られたスヒョクは秘めていたスキルを解放して立ち上がるが…。

 高倉健が主演しそうな王道パターンだが、組織から「洗濯機」と呼ばれる殺し屋カップルを「非常宣言」のキム・ナギルとドラマで活躍するパク・ユナが、今風の割り切りキャラクターとして演じて新味がある。


 闇バイト的な依頼に踊らされているようで、逆に組織を利用するしたたかさを、序盤はひたすら腹立たしく感じるが、時を追ってその人間味に不思議な共感を覚えさせられる。一筋縄ではいかない展開の中で、対組織でスヒョクと微妙な共闘関係となる流れとマッチした洗濯機カップルのキャラ作りに、ウソン監督の思惑と腕前を実感した。

 くぎ打ち機を改造したマシンガン的武器など、悪童がそのまま大きくなったような彼らを象徴するツールも登場。2人そろってアクションもキレている。

 組織のナンバー2で、スヒョクへの強烈なコンプレックスから、彼をつぶそうと躍起になるソンジュンに「金子文子と朴烈(パクヨル)」のキム・ジュンハン。冷酷さに三枚目的な要素を絡め、演技的には見せ場が一番多い。

 ボス役のパク・ソンウンも含め、それぞれに個性が立ったキャスティングはウソンが人脈を生かしたものだろう。ちょっとキメ過ぎかもしれないが、スタイリッシュなアクションシーンや、無駄なく配置されたドラマ部分に持ち前の律義もにじんだ初監督作品だった。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)